コスト増で収益悪化の中小企業はボーナスも伸び悩みか
一方で、不安が残るのが中小・零細企業だ。新家氏はこう指摘する。
「中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことが多い」「資源価格上昇の影響が足元で一段と強まりつつあることは懸念材料だ。中小企業ではコスト増を価格に十分転嫁することは容易ではなく、収益が圧迫される可能性が高いため、ボーナスの伸びも抑制されやすいだろう」
大手企業を中心にボーナス増加が見込まれるのに、中小・零細企業を含めた全体としてみると大幅な増加は見込みがたい、というわけだ。
そんななか、大きな懸念になっているのが生活必需品価格の上昇だ。新家氏は
「エネルギー価格の上昇に加え、足元では食料品価格の値上げが加速しており、22年度の物価上昇率は大きく高まることが予想される」
として、22年3月上旬時点でのエコノミストコンセンサス(民間エコノミストのアンケート調査)の「プラス1.51%」という数字をあげる。これは、新家氏が予想してみせた今夏のボーナス上昇率「プラス1.2%」より0.31%高い、ということになる。
それだけに、新家氏はこう結ぶのだった。
「小幅とはいえベースアップが実現し、ボーナスも伸びが高まることで名目賃金については増加が見込まれるものの、それでも賃金の伸びは物価上昇に追い付かない可能性が高く、実質賃金でみればマイナスが予想される。コロナ禍からの持ち直しが期待されている個人消費だが、その期待が裏切られる可能性があることに注意したい」
(福田和郎)