フードロス削減に向けた企業や自治体の動きが活発化している。国連が2030年までに達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みの一環として、重視しているためだ。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で食品不足や食品価格高騰の懸念が強まり、食品ロス削減への関心を一段と高めている。
毎日、1人が茶わん1杯のご飯捨てている!?
日本国内では年間570万トンの食品が消費されずに廃棄されている、といわれている。その量は毎日、1人が茶わん1杯のご飯を捨てている計算だ。
廃棄されている量は企業などによる事業系と、消費者による家計系でほぼ半々だと推計されている。そこで、日本総合研究所やイトーヨーカ堂などは、企業と消費者が協力して削減を目指すことが重要だとして、2022年1~2月、新たな実証実験を行った。
ロスが生じそうになった食品はスピーディーに価格を引き下げ、消費者がスマホなどですぐ確認できるようなシステムを取り入れたり、産地から野菜の出来栄えなどを消費者に伝え、購買を促したりする。実証実験の結果を検証したうえで、今後に生かす方針だ。
コンビニエンス業界では、冷凍食品を強化する動きが急速に進んでいる。冷凍食品は長期保存が可能で、フードロスの削減につながるというのが理由だ。ローソンは、冷凍食品全体の売上高を、25年度に20年度比で5倍にまで伸ばす目標を明らかにしている。
企業と自治体が連携する取り組みも広がっている。さいたま市はフードロス削減プロジェクト「チームEat All」を20年にスタート。参加企業とともに、食べ残した食品の持ち帰りや余った食材を使ったレシピの作成などを進める活動をしている。
ほかに、甲府市は22年2月から、市内のレストランやホテルなどで売れ残りそうになった食品などを消費者らに仲介する「甲府タベスケ」の運用を開始した。
「環境教育」受けた若い世代の関心高い
企業などのフードロス削減が活発化している背景にある「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の略称で「エス・ディー・ジーズ」と発音する。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、2016年から2030年の15年間の目標を、貧困、飢餓、ジェンダー、環境など17の分野ごとに掲げている。
欧米を中心に、SDGsなど社会問題に後ろ向きな企業を投資対象にしないことがコンセンサスになっており、この潮流から外れたら、企業価値を損ねる恐れがある。また、今の20~30代半ばの若者は、学校で持続可能な社会を目指す「環境教育」を受けて育っており、「フードロス対策は若い世代を引きつけるためにも不可欠」(企業関係者)という声もある。
新型コロナウイルス禍で世界の物流網が混乱する中、小麦の主要生産地であるウクライナやロシアで、戦争やそれによる各国からの制裁から大混乱に陥っている。このため、食品不足やそれに伴う食品価格の一段の高騰への警戒感が広がっている。
こうした状況を受け、「廃棄食品をなくし、無駄なく食べることこそ重要な対策だ」(食品アナリスト)との声も強まっている。食料への関心が広がるとともに、フードロス削減の機運が高まっていく可能性は高い。(ジャーナリスト 済田経夫)