少子高齢化や過疎化の影響で、多くの学校が廃校になっている。廃校になった公立小中学校、高等学校等のうち約2000校は、何の活用もされずに放置されている。
文部科学省は3月30日、2021年5月1日現在の「廃校施設等活用状況実態調査」と「余裕教室活用状況実態調査」を公表した。
2002年度から2020年度までの廃校数、累計8580校
文科省によると、2020年度の廃校数は335校で、小学校227校、中学校73校、高等学校等35校となった。
2002年度から2020年度までの廃校数の累計は8580校で、小学校5678校、中学校1721校、高等学校等1181校となった=表1、表2。
この8580校のうち、学校施設が現存している廃校数は7398校にのぼり、そのうち1971校(25.9%)が活用されずに放置されている。
活用されている廃校数は5481校(74.1%)で、活用例としては公立の小中学校、高等学校等、大学以外の学校として再活用されているケースが最も多い。
再活用には、校舎と屋内運動場を分けて再活用を図っており、学校としては校舎1987か所、屋内運動場1961か所が再活用されている。
また、1つの廃校を複数の施設として活用するケースも多く、社会体育施設、社会教育施設や文化施設、あるいは福祉施設や医療施設などにも活用されている。
福祉施設としては、校舎が老人福祉施設に169か所、障害者福祉施設に129か所、放課後児童クラブに95か所の利用となっている。
予想外に多いのが、企業や法人等の施設や創業支援施設としての利用だ。企業や法人等の施設としては、校舎が635か所、屋内運動場が312か所の計947か所も利用されている。このほかにも、庁舎等や体験交流施設、備蓄倉庫などに再活用されているケースも多い。
一方、活用されていない廃校1971校のうち、活用の用途が決まっているのは278校(3.8%)にとどまっており、活用の用途が決まっていないのが1424校(19.2%)にのぼる。また、取壊しを予定しているのが215校(2.9%)となっている。
活用方法が決まらない理由(複数回答)としては、校舎、屋内運動場ともに、「建物が老朽化している」(校舎が46.2%、屋内運動場が42.3%)、「地域等からの要望がない」(校舎が41.6%、屋内運動場が40.4%)が多数を占めている。
使われていない普通教室は、他の学校施設へ転用多い
廃校には至らないものの、児童・生徒数の減少などによって使用されていない普通教室が8万7064室もある。このうち、「余裕教室数」は7万3247室、「一時的余裕教室」は1万3817室となっている。
「余裕教室数」とは、学区域に居住する児童等の人口からみて、今後5年間以内に、普通教室として使用されることがないと考えられる教室。「一時的余裕教室」とは、今後5年間以内に、普通教室として使用されることになると考えられる教室だ。
学校別では、小学校が4万7097室、中学校が2万5897室、義務教育学校が253室となっている。
問題となるのは、今後5年間以内に、普通教室として使用されることがないと考えられる「余裕教室」の活用だが、現状では7万3247室のうち、7万2266室(98.7%)が活用されている。
学校別では、小学校が4万6362室(93.9%)、中学校が2万5652室(99.1%)、義務教育学校が252室(99.6%)となっている。
ただし、具体的な使われ方として、このうち6万9257室(約95.8%)はその学校の施設として、2801室(約3.9%)が学校施設以外、208室(約0.3%)が特別支援学校など他の学校の施設、にそれぞれ活用されている。
「学校の施設」として活用されているケースの詳細は、3万2004室(46.2%)が学習方法・指導方法の多様化に対応したスペース、1万5274室(22.1%)が特別教室としてだ。ようするに、約7割の教室が、新たな活用方法を見出しているわけではなく、教室の延長上としての活用にとどまっている。
公立学校は国庫の補助によって作られたものであり、いわば国民の財産。ところが、少子高齢化などの時代の流れにより、放置されている廃校が約2000校もある。地域の知恵を集結して、有効活用を図っていきたいものだ。