これからは「内部労働市場のアップデート」が必要
企業はどうすればいいのか。昨今ブームになっているジョブ型(職務主義)の人材マネジメントは、賃金カーブフラット化のための成果主義的な狙いが強く、中高年問題に対しては「処遇是正」という対症療法的な機能しかない、と見ている。
これから必要なのは、社内公募、社内副業・兼業などを通じて、従業員のキャリア志向性や進みたい職種の「意思」をマッチングさせていくような社内の流動性確保であり、「内部労働市場のアップデート」が必要だ、としている。
社内公募、社内のジョブ・マッチング、研修までを含んだ総合的な中高年施策を積極的に打っている企業の代表として、ソニーの取り組みを紹介している。50歳以上のベテラン・シニア社員に向けて新しい分野への挑戦(職域の拡大)サポート、キャリア形成・自律支援、制度変更を伴うキャリア支援総合施策を2017年から行っている。
社内マッチング・プラットフォームを持っており、上司の了承を得たうえで自分の経歴を登録しておく。すると、必要とする部署があれば、スカウトされる仕組みだ。社内で疑似転職をするようなもので、「変化適応力」を高めることにつながっているという。
それでは、個人としては転職にあたり、どう行動したらいいのだろう。小林さんは、特定領域の専門性だけでは生涯のキャリアは安定しないものになってきた、と問題提起している。技術・スキルの専門性にこだわりすぎるのは危険だ、として、変化適応力の重要性を説いている。
本書は男性中高年のネガティブな要素を検討してきたが、実は「日本の中高年には能力や経験で若年層にはない大きなポテンシャルがある」というのだ。それは、個人が持つ知能・能力の高さ、仕事を続ける気力、過去の膨大な仕事経験、人とのゆるやかなつながりだ。