コロナ終息しても、テレワークは前提に...各社で加速「テレワーク革命」の実態

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午後5時以降、問い合わせと社内会議禁止...キユーピー

   食品大手のキユーピーの場合は、2020年の東京オリンピックで予想された交通混雑を見据えて、テレワークの普及を進めてきた。東京・渋谷の本社近くにはオリンピックスタジアムが、拠点工場がある京王線沿線には東京スタジアムがそれぞれあり、混雑の影響を受けそうだったからだ。

   社員が住むエリアに応じて、2種類のテレワークを使い分けたのが特徴だ。京王線沿線や埼玉県、茨城県に住む社員は、自社拠点に設けたサテライトオフィスでのテレワークとした。一方で、自社拠点のない千葉県に住む社員はむ在宅勤務とした。

   また、13年に東京・仙川の工場跡地に、グループ本社や研究開発部門などが集まる大規模拠点「仙川キユーポート」を設け、渋谷の新本社オフィスの2拠点にサテライトオフィスとしての機能を持たせたことも役に立った。

   午後5時以降、問い合わせと社内会議は禁止するなど、働き方改革も進めてきた。一連の取り組みによって残業時間は減り、減らした残業代を従業員に還元したのもユニークだ。

   こうしてみていくと、スムーズにテレワークに移行した企業は、コロナ禍前から、働き方改革に取り組んできたことがわかる。

   本書ではほかにも、18年12月から領収書の電子化を断行した塩野義製薬、18年に年間労働時間を半月分減らした日清食品などの取り組みも紹介している。ITを巧みに導入した企業が、コロナ禍にもうまく対応できたことを痛感した。

   コロナが終息しても、テレワークを続ける企業は多いようだ。

   経費、生産性、売上などを総合的に勘案してもメリットがあると判断したのだ。そうなると、テレワークを導入している企業とそうでない企業、同じ会社内でもテレワークのある職場とない職場との不均衡が、新たな労働問題として浮かび上がりそうだ。

   もちろん従来通り、会社に通勤したいという人もいるだろう。しかし、一度テレワークの果実を知った人は後戻りできないだろう。

   やがて、その流れは一個人を超え、日本の企業、産業、都市、そして国土のありようまで変えるかもしれない。「テレワーク革命」3年で、東京からの人口流出は現実のものとなっている。

(渡辺淳悦)

「テレワーク大全」
日経BP総合研究所イノベーションICTラボ著
日経BP
2200円(税込)

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