中国不動産バブルの崩壊、いよいよ始まるのか?
最後に、中国の不動産大手・恒大集団の経営危機などから、中国の不動産バブルの崩壊のリスクに懸念を示すのが、信金中央金庫地域・中小企業研究所の平岡芳博氏だ。 平岡氏のリポート「灰色のサイ-不動産バブルの持続的拡大と中国債務の現在」(4月5日)は、全12ページにわたる力作だ。
リポートのタイトルにもなっている「灰色のサイ」とは、「ブラックスワン」(=黒い白鳥。白鳥は白いものという常識を覆して〈発見〉されたオーストラリア固有種)との対比で生まれた言葉。そして、「灰色のサイ」は「ブラックスワン」のように、「既存の知識や経験からは予測不可能かつ極端な事象で、実際に起きると甚大な影響を及ぼすリスク」で、
「普段はおとなしいが、暴れだすと手が付けられないサイのように(中略)予測可能であるにもかかわらず直視されることがなく、ひとたび発現すると大きな問題となり得るリスク」
のことだそうだ。それが、中国の不動産バブルというわけだ。
平岡氏によると、中国の不動産バブルの厄介なところは、日本版バブル崩壊(地価の下落が企業のバランスシートを直撃)と違って、集合住宅(分譲マンション)が投資の対象になっていることだ。
しかも、図表4のように銀行が、デベロッパーに対する開発資金・運転資金の貸出という「供給サイド」と、個人に対する物件購入資金の貸出という「需要サイド」の両面から、取引の成立を支える構図になっている点だ。つまり、需要と供給の両面からあおっているわけだ。
そのうえ、こうした銀行は「住宅ローンに関する統計データ等が十分とは言えない」ため、実態の把握が困難なようだ。平岡氏は「危機は迫っている」とこう結んでいる。
「弾けないバブルはない。重要なことは、貸出の拡大でバブルを支えたり、経済規模の拡大によって希釈することではなく、バブルの縮小に向けたデレバレッジの途を準備しておくことである。デレバレッジとは、つまるところ、額面を満たさない資産の損失を確定し、当該損失を関係者でどう分担するかの作業である」
と、中国の不動産に投資した日本の中小企業経営者らに、速やかな「撤退作戦」開始を呼びかけたのだった。
(福田和郎)