世界金融危機時に匹敵する「中国経済の減速」
経済の低迷が中国にも分断を招くかもしれない、と警告するのは第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。
西濵氏のリポート「『躓(つまず)いた』では済まないかもしれない中国経済~ゼロ・コロナ戦略の悪影響の長期化懸念に加え、同国においても『分断』が生まれるリスクにも要注意~」(4月6日付)の中で注目したのは、経済指数の悪化だ。
今年1~3月の製造業とサービス業を統合した総合PMI(購買担当者景気指数)が48.0に下落した=図表1参照。「購買担当者景気指数」(PMI)とは、企業の購買担当者に新規受注や生産、雇用の状況などを聞き取り、景況感についてアンケート調査した結果を指数化したもの。「50」を判断の分かれ目とし、この水準を上回る状態が続くと景気拡大、逆に下回る状態が継続すると景気減速を示す。
中国では、武漢で最初に新型コロナが発見された直後の2020年1~3月(42.0)に急落したが(再び、図表1参照)、それ以前では2009年1~3月に大きく下がった時期の水準となる。この時期はまさしく、リーマン・ショックに端を発した世界金融危機が発生した頃なのだ。西濵徹氏はこう指摘する。
「過去に遡れば世界金融危機の影響がくすぶる2009年1~3月(47.6)並みの水準となるなど極めて厳しい状況にあると判断できる」「多くの都市において都市封鎖が実施されるなど幅広く経済活動の足かせとなる動きが続いており、サプライチェーンが大きく混乱するとともに、市民生活にも悪影響出ている」「景気への下押し圧力が長期化する可能性も高まっている。その意味では足下の中国経済は『躓つまずき』では済まされない状況に陥ることが懸念される」
しかしながら、中国以外の他国ではコロナ禍対応をめぐり、国民の間に分断が生まれて各国政府に難題を突き付けているのに対して、これまでの中国では言論統制を通じて「ゼロコロナ」戦略に有無を言わせない雰囲気が醸成されてきた。だが、西濵徹氏はこう結ぶのだった。
「ゼロコロナ戦略の弊害が顕在化するなかで、国民の間に不満が高まる動きもみられるなど、(今秋には5年に一度の中国共産党大会が開かれる)政治の季節を控えるなかで『中国ルール』が行き詰まりをみせることも考えられる」