通常、選挙後に補正予算を成立させるが...
こうした状況でも、岸田首相は5日の関係閣僚会議で「まずは予備費を活用した迅速な対応を優先する」と、早期補正に慎重な姿勢を崩していない。
その背景にあるのが、政治日程をにらんだ判断だ。
今のところ、政府・自民は参院選の日程を6月22日公示、7月10日投開票と想定し、6月15日までの今国会の会期は延長しない考えとされる。大規模な経済対策の策定と補正予算案の編成には一定の期間がかかり、会期内に成立させるには綱渡りの日程調整を強いられることになるからだ。
実際、国会で補正の審議となれば、野党が政府案を上回る規模の対案を出し、政府案は不十分と批判するのは確実で、選挙で与党に不利になると懸念する。また、補正予算にはさまざまな業界の要望を反映することになるが、選挙前に予算が通ってしまえば、選挙での業界団体などの運動が緩む恐れもあるというのだ。
こうした懸念から、近年は大型国政選挙前には経済対策の方針だけ示し、補正予算は選挙後、というのが一般化している。岸田政権も2021年の総選挙で、選挙直前に首相が経済対策の策定を指示し、選挙後に補正予算を編成・成立させた。
自公の関係は、一時、ぎくしゃくした参院選の相互推薦について、3月中旬に従来通り推薦し合うことでようやく決着したばかり。新たに浮上した補正予算をめぐる主張の隔たりを埋めるのは容易でないとみられ、自民党内の主導権争いも絡み、政局の火種としてくすぶり続けそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)