経済対策をめぐる自民党内の主導権争い
自民党と公明党とのせめぎ合いだけでなく、自民党内の主導権争いを指摘する声もある。
茂木敏充幹事長と高市早苗政調会長の間の不協和音だ。3月16日に自民、公明と国民民主の3党幹事長会談で、原油高対策として「トリガー条項」の発動などを検討するチームの立ち上げで合意したが、高市氏は約2時間後、「現段階で連絡がない」と不快感を露わにした。
年金支給額が下がる高齢者向けに5000円を給付する案でも、官邸主導で検討が進み、3月15日、高市氏を含む自公の幹事長・政調会長4人が岸田首相に提言したかたちになったが、高市氏は直前まで知らされていなかったという。
29日の緊急対策策定の首相指示がされた後、高市氏は会見で5000円給付に「反対の声も多い。(財源に想定していた)今年度(21年度)の予備費は事務的に間に合わなくなったので、もう、この話はなくなった」と言い切った。
岸田首相は前日の28日、国会で「本当に必要なのかどうか、しっかりと検討したい」とトーンダウンしていたが、高市氏の「この話はなくなった」との唐突な撤回宣言は、首相―茂木氏ラインで進んだことへの意趣返しとの声もある。
このほか、公明とのパイプは健在とされる菅義偉前首相が4月3日のテレビ番組で、物価高騰対策について「補正も含め、経済対策に全力で取り組むべきだ」と述べたことが憶測を呼んでいる。
菅氏は7日の別のテレビの収録で「早ければ早いほどいい」と踏み込んだ。岸田首相との距離がささやかれ、自身の派閥結成の観測が絶えない菅氏の発言だけに、首相への牽制と見る向きもある。