ロシアによるウクライナの民間人への残虐行為が明るみになるなか、欧米諸国はロシアに対する経済制裁を強める動きを加速させている。
日本もそれに同調したら日本企業にどんな影響がでるだろうか。参考になりそうなのが、帝国データバンクが2022年4月6日に発表した「日本企業の『ロシア貿易』状況調査」というリポートだ。
ロシアと直接輸出入をしている338社の企業を分析、国内サプライチェーンへの影響を分析した。
「ウッドショック」の打撃からさらに木材高騰
ウクライナへ侵攻を続けるロシアに対する追加制裁では、半導体などハイテク製品、工作機械など軍事転用可能な品目については輸出を禁止する一方で、水産品などの輸入品については「地域経済への影響が大きい」として禁輸を見送る方向を示すなど、対ロ貿易を巡る日本政府の対応は流動的だ。
ただ、木材などではロシアが日本を含めた「非有効国」への輸出禁止を打ち出すなど、輸入依存度が高い日本への影響が出始めている。
帝国データバンクの調査結果によると、在ロシア企業と直接取引を行っている日本企業は2022年3月現在、国内に338社ある。さらに、こうした直接輸入・輸出企業と取引関係にある企業は1万4949社あることがわかった。つまり、経済制裁の影響を受ける企業は、ロシアと直接・間接的に取引関係があるサプライチェーンでは、合計1万5287社にのぼるというわけだ=図表1参照。
細かくみていくと、このうち、輸出関連の企業が1万975社、輸入関連の企業が4614社だった。
輸出面では年間10数万台を超えるロシア向け自動車生産を中心に、当面需要が消えることになるそうだ。また、日本車の人気が高いロシアは、日本の中古車の最大の輸出先になってきた。したがって、ロシアへの輸出にブレーキがかかると、コロナ下で上昇傾向にあった中古車の市場価格が下落に転じる可能性も指摘されている。
一方、輸入面でみると、ロシアと直接、または2次的に取引関係がある代表的な業種では「木材・竹材卸売」(138社)、「木造建築工事」(80社)など、木材関連が上位となった=図表2参照。ロシアからの輸入製材品は、カナダに次いで2番目に多く、製紙や建築用木材としてロシア材を取り扱う企業が多いのだ。
しかも、新型コロナの流行以降、世界的に木材の価格が高騰、「ウッドショック」と呼ばれる状況が進んだ。「巣ごもり需要」の影響で、米国で木材住宅の建築ラッシュが起こったためだ。2020年から2021年にかけて木材価格が2倍以上に上昇、現在も高止まり状況が続いている。
世界の約2割の森林を持つロシアからの木材の入手が困難になると、世界全体で需給が逼迫し、日本も価格高騰のあおりを受ける恐れがある。すでにロシアは木材などでは「非友好国」の日本には輸出禁止を打ち出している。輸入依存度が高い建築用合板では品薄が危惧され、一部品目では供給網に支障が生じ始めている。そうでなくても住宅建築費が高騰している現在、マイホームの夢はさらに遠のきそうだ。