日本、サハリン1・2での事業はどうなるのか?
ロシアへの追加経済制裁をめぐり、米国とEU、さらにEU内部で対立があるなか、日本はどうだろうか。
ロシア産原油やLNG(液化天然ガス)の生産拠点である「サハリン1」と「サハリン2」プロジェクトが今後のカギになる。同プロジェクトは、共同開発を進めてきた米エクソンモービルと英シェルが撤退を表明、双方に権益を有する日本政府、企業の出方が注目されているからだ。
岸田文雄首相は3月31日、「サハリン1・2から撤退しない」と表明したが、その隠れた理由について、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、リポート「日本政府はサハリン1・2の事業継続を表明も先行きは不透明」(4月5日)のなかで、「撤退すると中国に権益を持っていかれる懸念」があると、こう述べている。
「資源小国の日本にとって、ロシアからの燃料確保はエネルギー安全保障政策上重要である。(中略)サハリンから撤退すれば、中国やインドに権益を奪われかねないという懸念もある。その場合には、制裁措置は有効でなくなる」
実際、2004年にイランのアザデガン油田の権益を取得したことがあった。しかし、核開発問題を抱えるイランへの経済制裁の一環として米国からの要請で撤退を余儀なくされた。約125億円の投資が無駄になり、中国に権益を持っていかれた苦い経験があるのだ。今回のロシアのケースによく似ている。
しかし、木内氏は別のリポート「対ロ追加制裁発動へ。EUのエネルギー関連制裁が日本のサハリン・プロジェクトの命運を握る」(4月6日)のなかでは、「ロシア軍の残虐さを示す証拠がさらに出てくれば、日本政府の頑張りも厳しくなるだろう」とこう推測する。
「今後、ロシア軍による残虐行為などを疑わせる証拠がもっと多く確認され、国際世論がロシアへの批判をエスカレートさせていく中で、主要国がさらに追加制裁措置を打ち出すことを迫られる可能性がある」「EUが経済への打撃を覚悟の上でロシア産原油、天然ガスの輸入禁止を決める可能性もあるだろう。そうなれば、日本もサハリン1、2からの撤退を決めざるを得なくなる」
そして、こう結ぶのだった。
「対ロシア制裁が段階的に強化されていく中では、制裁を掛ける側に打撃が返ってくる『ブーメラン効果』を回避することが次第に難しくなってきた。ロシア側と先進国側がともに傷つくなか、我慢比べ、チキンゲームの様相が強まっているのである」