食用油大手、J-オイルミルズの株価が2022年3月31日、一時前日終値比55円(3.3%)安の1605円まで値下がりし、約5年9か月ぶりの安値をつけた。その後も反転のきっかけをつかめずにいる。
株価下落の要因は、前日の30日に2022年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、営業損益が一転して赤字に陥る見込みとしたことだ。食用油の主な材料は大豆と菜種だが、いずれも高騰を続けている。2021年以降、2022年4月を含めて5度の値上げに踏み切っているが価格の浸透が進まず、コロナ禍もあって業務用食用油の販売が不振なことが下方修正につながった。
菜種、大豆...... 高騰する原材料価格
それでは下方修正の内容を確認しておこう。売上高は従来予想より15億円減の2000億円、営業損益は従来予想の5000万円の黒字から3億円の赤字に転落。最終利益は従来予想より3億円減の16億円を見込む。
J-オイルミルズは、「外食を中止とした市場の冷え込みにより、業務用製品の販売量が前回(1月)発表時点の予想以上に下回ったことや、販売価格改定の実現が想定より遅れた」と理由を挙げたうえで、「エネルギーコストの上昇もありコスト削減に努めたが及ばなかった」と説明している。
下方修正は1月に続くもので、投資家は足元の業況悪化が深刻なのではないかと危惧しているようだ。
問題の原材料価格だが、菜種は産地のカナダで高温乾燥によって大幅に生産量が減少するとの見通し。そのため、2021年に騰勢を強め、12月には1トン当たり1100カナダドル台まで上昇して過去最高値を更新した。
大豆は米国産の需給逼迫やバイオ燃料向けの需要期待で2021年5月、12年に付けた過去最高値をうかがう水準まで上昇。南米の豊作観測などから10月にかけて下落したが、年末から再び値上がり。22年に入ってウクライナ情勢悪化による穀物価格の全体的な高騰を受け、3月には再び過去最高値に近づいた。足元ではトウモロコシより肥料が少なくてすむことなどから、米国で作付けが進む見通しが公表されてやや下落しているが、高止まりと言える状況だ。
円安局面で、どうなる食用油業界!?
近年の食用油業界は、日清オイリオグループが首位、J-オイルミルズが2位で、昭和産業や不二製油グループ本社が続いており、こうした構図に変動はみられない。
J-オイルミルズは2002年にホーネンコーポレーションと味の素製油が経営統合し、豊年味の素製油が発足。03年に吉原製油が加わり、J-オイルミルズが誕生して現在に至っており、現在も味の素の持分法適用会社でもある。大手各社はほぼ横並びで、昨年から値上げを繰り返している。
2012年の大豆高騰の時も大手各社は食用油を値上げしたが、今回との違いは当時が東日本大震災直後の円高局面だったことだ。年間を通して1ドル=80円前後であり、大豆高騰のインパクトは国内では抑制されていた。
しかし、今回は円安局面であり、輸入業者にとっても消費者にとっても2012年よりはるかに厳しい状況であり、需要減が懸念されている。
J-オイルミルズの株価にとっても大きな反転は当面、見通しにくいと言えそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)