スズキ、重要市場インドでEV新工場...1500億円投資 危機感強く、競争力強化で巻き返しへ!

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   スズキがインドで電気自動車(EV)と車載用電池の生産に乗り出す。車両の解体やリサイクルを行う工場も含め、総額で約1500億円を投じ、2025年から26年にかけて稼働を目指す。生産能力などは未定で、詳細は今後決める。

  • インドでも環境対策は急務、EVへの期待は大きい(写真はイメージ)
    インドでも環境対策は急務、EVへの期待は大きい(写真はイメージ)
  • インドでも環境対策は急務、EVへの期待は大きい(写真はイメージ)

25年にEV生産開始へ、26年に新電池工場稼働へ

   2022年3月中旬、岸田文雄首相のインド訪問に合わせて訪印中した鈴木俊宏社長が、インド西部グジャラート州側と覚書を結んだ。同州にすでにある自動車組み立て工場をEV用に増強し、25年にEV生産を開始するとともに、隣接地に車載用電池の工場を新設して26年に稼働させる。

   スズキは1982年、他社に先駆けてインドに進出し、新車市場で約半数のシェアを持つトップメーカーだ。逆に、スズキにとってインドは世界販売の半分、営業利益の3割(他のアジア地域を含む)を稼ぎ出す最重要市場だ。

   ただ、このところは中韓勢や現地メーカーの攻勢を受けている。スズキのシェアは2021年度に47.7%と、26年3月期までの中期経営計画で防衛ラインに位置付ける5割を割っただけに、危機感は強い。

   EVについても、未発売のスズキをしり目に、地元のマヒンドラ・アンド・マヒンドラが2013年に早々に発売しているほか、韓国・現代自動車も19年に発売している。市場の立ち上がりを待たず、スズキに先駆けて富裕層らを取り込む戦略といわれる。

EV開発は資本提携するトヨタ自動車と協働

   インドでEVはどうなっていくのか。

   インドの二酸化炭素(CO2)排出量は、中国と米国に次ぐ世界第3位。人口は2027年には中国を抜いて世界1になると見込まれ、自動車市場(足元で年間270万台)は今後も拡大を続けるのが確実で、環境対策が急務となっている。

   モディ首相は2021年11月、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、2070年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成を目指すと発表した。その具体化として30年に新車販売に占めるEVの比率を3割に高める目標を掲げ、EV購入時の補助金、車メーカーへの国内でのEV生産実績に応じた助成金を出すことを表明している。

   ただ、所得水準はなお低いうえ、EVの普及に欠かせない充電設備の設置など基盤整備が進んでおらず、新車市場に占めるEVの実績は年間数千台にとどまるという。

   それだけに、これまでインド市場に限らずEVの実績がなく、「出遅れ」が指摘されてきたスズキも、まだまだ十二分に挽回は可能。EVの開発については、資本提携するトヨタ自動車の協力を得ながら進めることになる。

   インドということでは、地政学的に重要性が増していることも押さえておく必要がある。伝統的に「非同盟」を外交指針としてきたインドは、ウクライナへの侵攻では、旧ソ連時代からロシアと比較的親密な関係を維持してきたこともあって、国際的な対露制裁に同調はしていない。だが、近年、中国との関係悪化を背景に、安全保障面全般では米国や日本との関係を重視してきている。

   対中国の巨額の貿易赤字を抱えることもあって、インドにとって、スズキの技術力を生かして自動車の電動化を進めることは、経済安全保障上、重要な意味があるとみられる。

   スズキが、まさにそのインドで、EVの心臓部ともいえる電池を含め現地生産していくという今回の方針により、インドでのスズキの重みはさらに増すことになる。

(ジャーナリスト 済田経夫)

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