EV開発は資本提携するトヨタ自動車と協働
インドでEVはどうなっていくのか。
インドの二酸化炭素(CO2)排出量は、中国と米国に次ぐ世界第3位。人口は2027年には中国を抜いて世界1になると見込まれ、自動車市場(足元で年間270万台)は今後も拡大を続けるのが確実で、環境対策が急務となっている。
モディ首相は2021年11月、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、2070年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成を目指すと発表した。その具体化として30年に新車販売に占めるEVの比率を3割に高める目標を掲げ、EV購入時の補助金、車メーカーへの国内でのEV生産実績に応じた助成金を出すことを表明している。
ただ、所得水準はなお低いうえ、EVの普及に欠かせない充電設備の設置など基盤整備が進んでおらず、新車市場に占めるEVの実績は年間数千台にとどまるという。
それだけに、これまでインド市場に限らずEVの実績がなく、「出遅れ」が指摘されてきたスズキも、まだまだ十二分に挽回は可能。EVの開発については、資本提携するトヨタ自動車の協力を得ながら進めることになる。
インドということでは、地政学的に重要性が増していることも押さえておく必要がある。伝統的に「非同盟」を外交指針としてきたインドは、ウクライナへの侵攻では、旧ソ連時代からロシアと比較的親密な関係を維持してきたこともあって、国際的な対露制裁に同調はしていない。だが、近年、中国との関係悪化を背景に、安全保障面全般では米国や日本との関係を重視してきている。
対中国の巨額の貿易赤字を抱えることもあって、インドにとって、スズキの技術力を生かして自動車の電動化を進めることは、経済安全保障上、重要な意味があるとみられる。
スズキが、まさにそのインドで、EVの心臓部ともいえる電池を含め現地生産していくという今回の方針により、インドでのスズキの重みはさらに増すことになる。
(ジャーナリスト 済田経夫)