これでいいのか?...東洋経済「東証沈没」 エコノミスト「世界経済入門」、ダイヤモンド「後悔しない認知症」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 東証の市場再編を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
    東証の市場再編を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 東証の市場再編を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)

改革が骨抜きになった東証再編

「週刊東洋経済」(2022年4月9日号)
「週刊東洋経済」(2022年4月9日号)

   2022年4月4日、東京証券取引所の市場が約60年ぶりに大幅再編され、プライム、スタンダード、グロースの3つの新市場が始動した。同日発売の「週刊東洋経済」(2022年4月9日号)は、さっそく「東証沈没 これでいいのか日本株」という特集を組み、今回の再編の問題点を指摘している。

   経過措置によって、本来の基準を満たしていないのにプライム市場へ移行できた企業を、市場関係者は「ゾンビ・プライム」企業と呼んでいるという。その数は、200社以上に上る。また、経過措置には今のところ期限がないので、いつまでも経過措置が受け続けられるという「抜け穴」だらけなのだ。

   改革が骨抜きになった理由として、1つは東証が改革議論の主導権を握れず、金融庁が引き取ったことを挙げている。そして、与野党の国会議員が金融庁に圧力をかけたため、ほぼ現状維持の内容になったという。

   TOPIX(東証株価指数)を東証1部と切り離し、厳選した優良企業で構成していくという案もあったが、2020年10月の大規模システム障害によって、TOPIX改革に意欲的だった宮原幸一郎社長が引責辞任に追い込まれた。これがもう1つの理由だという。

   同誌は、「適合計画書」を出して、上場維持を果たした企業551社の計画内容がどこまで実現可能なのかチェックした。そのなかで、「計画期間は現時点で策定が困難」としたのが帝国ホテル(スタンダード市場)だ。同社が満たしていない基準は、流通株式比率。25%が必要なところ、14.2%にとどまっている。筆頭株主の三井不動産が全体の3分の1を保有するほか、アサヒビール、大和証券グループ本社、みずほ銀行などが大株主として名を連ねる。

   帝国ホテル東京の建て替え(2024~36年度)を控え、既存の株主からの協力が欠かせない中、基準を満たすのがいつになるのか示すことができないようだ。 このほか、「親子上場を続ける困った面々」として、日本郵政と子会社のゆうちょ、イオンと5つの子会社、ソフトバンクグループと子会社のZホールディングスの関係を挙げている。ソフトバンクグループのように、親会社の時価総額を子会社の合計が大きく上回るという異常事態は、「グルーバル投資家の目にどう映っているのだろうか」と、問題提起している。

   パート2では、骨抜きの市場再編に有識者が「喝」を入れている。

   マネックスグループCEOの松本大氏は「市場区分の見直しは、本来なら半年で制度を議論し、半年で実行すべきことだ」とスピード不足を指摘。また、時価総額が純資産の価値を下回るPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が多く上場するなど、「株主の権利が軽視されているから、日本の資本市場はどこかダメなままだ」としている。野村證券の元社長で氏家経済研究所代表の氏家純一氏は「制度設計の速度を上げ、より柔軟に変えていけ」と注文をつけている。

   投資先としての日本の魅力がなければ、日本全体が沈んでいく。「まだ日本株やってるの? 米株をやらないと」と言われたという投資家の声を紹介している。 若者の日本株離れが進み、楽天証券では新規資金の8割がアメリカの投資信託にいっているという。ガバナンスの強化を含め、東証は改革を進めないと内外の投資家から「見放される日は近い」と、厳しい言葉も並んでいる。

原油は史上最高値更新も

「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)
「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)の特集は、「ウクライナ戦争で急変 世界経済入門」だ。ロシア、ウクライナだけでなく、国債の「破綻リスク」が世界的に急上昇している。ロシア国債のデフォルトは不可避という見方がエコノミストに広がっている。

   第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは、このほか破綻リスクが高い国として、アルゼンチンなどファンダメンタルズが脆弱な国、ハンガリーなどウクライナからの避難民を多く受け入れている周辺諸国、カザフスタンなどロシアとの結びつきが強い国を挙げている。

   国際的な危機の中で、米経済は「巡航速度」を維持できるのか。伊藤忠総研の高橋尚太郎上席主任研究員は「ウクライナ危機で絶対的な安全資産としてのドルの需要が強まった」と見ている。ドルの基軸通貨としての地位は揺らぐどころか強まった可能性すらあるという。

   国際商品の代表である原油は上昇している。国際指標であるWTIは新型コロナウイルスのオミクロン株出現などを受けて、2021年12月2日に1バレル=62.43ドルと3か月半ぶりの安値をつけたが、ロシアのウクライナ侵攻後の3月7日には、一時1バレル=130.50ドルまで上昇した。

   三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「向こう2~3か月、WTIは高止まりし、一時的に史上最高値(147.27ドル)を更新しても不思議ではない」と見ている。原油輸入国は今後、不況下で物価が上がる「スタグフレーション」に陥る恐れがある、と警告している。

   原油の急騰を待たずとも、コロナ禍で収入が上がらない一方、物価の値上がりが続き、この春個人的に「スタグフレーション」感を覚えている人も多いのではないだろうか。

認知症新薬に失望の声

「週刊ダイヤモンド」(2022年4月9・16日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年4月9・16日号)

   「週刊ダイヤモンド」(2022年4月9・16日号)は、「後悔しない『認知症』」。診断・医療、介護、相続、保険などさまざまな認知症対策を総まとめしている。

   2025年には団塊の世代の多くが後期高齢者に突入し、認知症患者は高齢者の5人に1人の700万人を突破するとみられる。その子世代である団塊ジュニアが、認知症介護予備軍となる。あらゆる事態に備えて情報武装をしておくべきだろう。

   認知症に起因する高齢者万引き犯の増加、行方不明者の増加、ごみ屋敷問題など、社会問題が顕在化している。

   認知症の診断には誤診がつきまとう、と指摘している。誤診以外にも安易な診断がまかり通っているらしい。認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった、根本的な治療が困難な認知症と、治療可能な認知症の2つがある。後者をほったらかしにしないのが重要だという。

   正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などは、アルツハイマー型認知症と混同されやすいが、治療可能だ。また、老人性うつなどの精神疾患も、認知症と間違えられやすい。 認知症全体の6割を占めるアルツハイマー型認知症は、徐々に悪化が進行していく。認知症がどんな経過をたどって進んでいくのか。これをあらかじめ知っておくことは、家族の後悔の目を摘むことにつながりそうだ。

   アルツハイマー型認知症の治療薬と期待され、アメリカでは薬事承認された新薬アデュカヌブヌのその後について取り上げている。原因物質の減少を期待されたが、臨床試験では思うような成果が得られなかったらしく、評価は低い。しかも、年間薬剤費が600万円以上で、民間保険会社が保険適用を見送る動きを見せ、富裕層の「贅沢薬」になってしまった。日本ではまだ承認されていない。医療現場からは失望の声が出ているという。

   一方で、認知症介護の落とし穴を避ける7か条が、参考になるかもしれない。認知症介護は10年以上の長丁場と心得よ。困ったときは「地域包括支援センター」。「正解」「成果」を追い求めない。追い詰められる前にデイケア等を利用し、一休み、などだ。また、遠距離介護と呼び寄せ介護、どちらが正解かは条件次第だという。

   将来、認知症の発症を防ぐにはどうしたらいいか。WHO(世界保健機関)が推奨するのは、運動・身体活動、禁煙、バランスのよい食事だ。

   人気の認知症保険の給付条件、使い勝手の比較、認知症相続の切り札とされた「家族信託」の思わぬ落とし穴、施設事業者とのトラブル対処法などもまとめている。

   リモート介護の当事者が選んだ便利アイテム10選には、見守りカメラ、スマートリモコン、スマートドアホン、などがある。同居しなくても親の状態を確認できるのは心強い。

   全国147の認知症疾患医療センターの医師体制、診察実績、使用している画像診断機器、入院対応などをまとめた調査リストが労作だ。受診の参考になるだろう。

(渡辺淳悦)

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