認知症新薬に失望の声
「週刊ダイヤモンド」(2022年4月9・16日号)は、「後悔しない『認知症』」。診断・医療、介護、相続、保険などさまざまな認知症対策を総まとめしている。
2025年には団塊の世代の多くが後期高齢者に突入し、認知症患者は高齢者の5人に1人の700万人を突破するとみられる。その子世代である団塊ジュニアが、認知症介護予備軍となる。あらゆる事態に備えて情報武装をしておくべきだろう。
認知症に起因する高齢者万引き犯の増加、行方不明者の増加、ごみ屋敷問題など、社会問題が顕在化している。
認知症の診断には誤診がつきまとう、と指摘している。誤診以外にも安易な診断がまかり通っているらしい。認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった、根本的な治療が困難な認知症と、治療可能な認知症の2つがある。後者をほったらかしにしないのが重要だという。
正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などは、アルツハイマー型認知症と混同されやすいが、治療可能だ。また、老人性うつなどの精神疾患も、認知症と間違えられやすい。 認知症全体の6割を占めるアルツハイマー型認知症は、徐々に悪化が進行していく。認知症がどんな経過をたどって進んでいくのか。これをあらかじめ知っておくことは、家族の後悔の目を摘むことにつながりそうだ。
アルツハイマー型認知症の治療薬と期待され、アメリカでは薬事承認された新薬アデュカヌブヌのその後について取り上げている。原因物質の減少を期待されたが、臨床試験では思うような成果が得られなかったらしく、評価は低い。しかも、年間薬剤費が600万円以上で、民間保険会社が保険適用を見送る動きを見せ、富裕層の「贅沢薬」になってしまった。日本ではまだ承認されていない。医療現場からは失望の声が出ているという。
一方で、認知症介護の落とし穴を避ける7か条が、参考になるかもしれない。認知症介護は10年以上の長丁場と心得よ。困ったときは「地域包括支援センター」。「正解」「成果」を追い求めない。追い詰められる前にデイケア等を利用し、一休み、などだ。また、遠距離介護と呼び寄せ介護、どちらが正解かは条件次第だという。
将来、認知症の発症を防ぐにはどうしたらいいか。WHO(世界保健機関)が推奨するのは、運動・身体活動、禁煙、バランスのよい食事だ。
人気の認知症保険の給付条件、使い勝手の比較、認知症相続の切り札とされた「家族信託」の思わぬ落とし穴、施設事業者とのトラブル対処法などもまとめている。
リモート介護の当事者が選んだ便利アイテム10選には、見守りカメラ、スマートリモコン、スマートドアホン、などがある。同居しなくても親の状態を確認できるのは心強い。
全国147の認知症疾患医療センターの医師体制、診察実績、使用している画像診断機器、入院対応などをまとめた調査リストが労作だ。受診の参考になるだろう。
(渡辺淳悦)