「会社に損をさせるようなアイデアを出せ」!
インターネット接続サービス大手のIIJ(インターネットイニシアティブ)の鈴木幸一会長は、「若い頃ホンダの創業者、本田宗一郎さんに可愛がっていただいた」というだけあって、とにかく挨拶が豪快だった。
「学生から社会人になると何が違うのか。大きな違いは、お金を払って学校に通う立場から、お金をもらう立場になるということです。これを良い仕組みだと思うか、何もしなくてお金がもらえるわけはないから大変だと思うか、皆さんはどっちでしょうか」
「会社のもうひとつの良い点は、たとえ何か失敗をしても、損をするのは失敗した個人ではなく、会社だということ。会社で一番面白いのは、チャレンジの機会が与えられるようなプロジェクトを自分で立ち上げられるということです。個人が破産することはないのだから、会社に損をさせるようなアイデアを出すくらい勉強してください」
ここで、本田宗一郎さんとの思い出深いエピソードを紹介した。
「(本田宗一郎さんに)『飲み代くらいで会社は潰れない。でも本当にやりたいことをやると、会社はすぐ潰れるよ』と言われたことがあります。何かをやろうとする時、会社というのは非常に都合がいい。非常に面白くて、将来モノになるのではというプロジェクトには、会社は100億円くらいすぐ出してくれる。個人でどんなに飲んでも1000万円使うのは大変です」
「失敗しても、その損は会社にかかってくる。それが会社の面白さであり、普通ならできないようなことも、会社という場で考えるとそれを実現しようとして後押ししてくれたり、実現できたりする。それが社会人の楽しい部分で、生きているという実感を持つためにはそうした発想が必要です」
そして、最後はこう結んだ。
「ただ会社に与えられた命令に従って働くだけでは楽しくない。ぜひいつか、会社のお金を思い切り使うようなプロジェクトを自分でやりたいという思いをもって、IIJで働いてください。(中略)次の30年は皆さんが担うわけで、ぜひ、本当に国を変えていく、あるいは、そういう強い思いをもって仕事に取り組んでいただきたいと思っています」
と、太っ腹なところを見せたのだった。