教師不足が深刻化している。文部科学省の調査によると、2021年5月1日時点で、全国の公立の小中高校と特別支援学校で、2065人・1591校で教師不足が発生していた。
「非正規」臨時教員が学級担任のケースも
文部科学省は1月31日、「教師不足に関する実態調査」を公表した。調査は全都道府県・指定都市の教育委員会等合計68団体を対象に、2021年度始業日と5月1日時点の公立の小中高校、特別支援学校計3万2903校の教師不足の状況をまとめた。
文科省では、「教師不足」を臨時的任用教員等の確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数が、各都道府県・指定都市等の教育委員会において、学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしておらず、欠員が生じる状態と定義している。
調査結果によると、教師の不足数は始業日時点で、小学校937校・1218人、中学校649校・868人、高等学校169校・217人、特別支援学校142校・255人の計1897校・2558人に上った。
その後、臨時的任用教員などの手当てにより、5月1日時点では小学校794校・979人、中学校556校・722人、高等学校121校・205人、特別支援学校120校・205人の計1591校・2065人にまで改善したものの、依然として2000人以上の教師不足が発生していた=表1。
教師の定数と実際に配置されている教師数を比較した不足率では、5月1日時点で小学校0.26%、中学校0.33%、高等学校0.01%、特別支援学校0.26%となっている。
この不足率だけを見ると、教師不足はそれほど深刻ではないように思える。しかし、教員の雇用形態の割合を見ると、小学校12.62%、中学校12.54%、高等学校10.41%、特別支援学校18.58%が臨時的任用教員と非常勤講師となっている。教師の1割以上、特別支援学校に至っては2割近くが正規教員ではないのだ=表2。
この影響は、小中学校の学級担任の雇用形態割合にも表れている。小学校の11.59%、中学校の9.28%が、学級担任は正規教員ではなく、臨時的任用教員とその他となっているのだ=表3。
学級担任は学校教育現在の最前線にあり、子どもたちと最も接する立場にある。その学級担任が正規の教員ではないという現実がある。小学校では学級担任の教師不足が367校・474人にも上る。
中学校、高等学校では「教科担任」の不足が生じている。中学校では家庭科で8人、音楽・美術で各2人など計16人、高等学校でも家庭科で2人など5人の教科担当教師が不足している。
教師の不足数が多いのは、福岡県、大阪府、茨城県
こうした教師不足の要因としては、(1)産休・育休取得者数が見込みより増加(2)特別支援学級数が見込みより増加(3)病休者数が見込みより増加――で、必要となる臨時的任用教員が見込みより増加したことがあげられている。
文科省やそれぞれの教育委員会では、教師の確保のためにさまざまな対策を講じてはいるものの、教師不足が抜本的に解消される状況にはない。
そこには、たとえば、一般的に臨時的任用教員は期間が短い(年度内だけなど)うえに、昇給がないことや、社会保険制度が完備されていない(正規教員と同じ社会保険に加盟できない)など、制度上の不備に近いもののある。また、教師という職業が大学生などに不人気なことも大きな要因だろう。
だからと言って、国の将来を担う子どもたちの教育を行う教師が不足し、臨時教員であっていいはずはない。国と各教育委員会は、既成概念にとらわれず、さまざまな発想、アイデアで教師を任用していくことが必要だ。
最後に、小学校と中学校の都道府県別の教師不足数の上位を取り上げる。小学校で教師数が充足しているのは、山形県、群馬県、東京都、新潟県、和歌山県、山口県の1都5県。中学校では岩手県、秋田県、山形県、東京都、新潟県、山梨県、和歌山県、高知県の1都7県となっている。
小学校、中学校ともに教師が足りているのは、山形県、東京都、新潟県、和歌山県の1都3県しかない。
一方、教師の不足数が多いのは、小学校、中学校とも福岡県、大阪府、茨城県などとなっている=表4、表5。