日本銀行「円安プラス」論、自らの短観調査が否定する結果に エコノミストはどう見たか...「どうする黒田総裁?」

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価格転嫁どころではない!? 大混乱の状況

   木内氏同様に、「インフレ傾向の高まり」を警戒するのが、第一生命経済研究所の首席エコノミストの熊野英生だ。

   熊野氏のリポート「業況悪化マイナス3ポイント、インフレ圧力は強い~2022年3月の日銀短観~」のなかで、「物価見通し」の上昇に注目した。図表がそれだ。

「『企業の物価見通し』では、大企業・製造業の1年後の『物価全般の見通し』が前年比1.5%と、2014年の調査開始以来で過去最高を記録した」「この物価全般の見通しは、中小企業のほうが高く、製造業では2.2%(1年後)、非製造業では2.0%(1年後)とより高い。これは、(中略)自社の販売価格も値上げを迫られていることから来ていると考えられる」
(図表)大企業・製造業の価格判断DIの推移(第一生命経済研究所の作成)
(図表)大企業・製造業の価格判断DIの推移(第一生命経済研究所の作成)
「大企業・製造業の販売価格判断DIは、24の『上昇』超で、これは1980年6月の第二次オイルショック以来の高さだ。大企業・非製造業でも、13 の『上昇』超で、湾岸戦争後の1991年6月以来の高さである。仕入価格判断DIも歴史的水準まで上がったが、販売価格の方にもかなり押し上げの力が働いていることがわかる。巷間、『価格転嫁ができない』と言われるが、実際は価格転嫁がとても追いつかないというのが実情なのだろう」

   数字と図が少々ややこしいが、つまり、製造業・非製造業ともに企業の販売価格と仕入れ価格の上昇率が、過去の戦争時に匹敵する水準にまで上がる混乱状態のため、価格転嫁どころの状況ではないということだ。

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