日本銀行「円安プラス」論、自らの短観調査が否定する結果に エコノミストはどう見たか...「どうする黒田総裁?」

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景気悪化と物価高が共存するスタグフレーションに?

   今回の短観調査は「日本経済が、景気悪化と物価高が共存するスタグフレーション的な様相を強めている」ことの表れと警告するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

   木内氏のリポート「スタグフレーション色を帯び始めた日本経済の内憂外患(日銀短観3月調査)」では、オミクロン株の感染拡大で冷え込んだ消費者心理に、ウクライナ情勢悪化によるエネルギー価格と食料品価格上昇が追い打ちをかけ、日本経済はまさに「内憂外患」の状態になった、としている。

   そのなかで木内氏が注目したのは、企業の物価見通しのDI(業況判断ディー・アイ)だった。

「企業の物価見通しでは、全規模全産業の5年後の物価見通しは、前回調査では0.2%ポイント上昇しプラス1.3%となった。今回調査ではさらに0.2%ポイント上昇し、プラス1.6%となった。足元での物価高は、企業の中期的なインフレ予想も明確に高め始めたのである。1年後物価見通しはプラス1.8%、3年後がプラス1.6%、5年後がプラス1.6%となっており、足元での物価上昇率の高まりが先行き定着する見通しが示されたのである」「『中期的なインフレ予想には変化はないことから、物価上昇は定着せずに一時的現象で終わる』としてきた日本銀行の主張には反する結果となった」

   今回の短観調査では、円安が企業の収益環境、景況感に与える影響にも注目が集まっているが、結果はどうだったか。

為替レートへの影響はどうか
為替レートへの影響はどうか
「多くの人が注目したのが、企業の想定為替レートと実際の為替レートとの乖離である。3月調査で全規模・全産業の2021年度下期の想定為替レートは110.96円となった。現在のドル円レートは1ドル122円程度であることから、10円以上にも達する乖離の分だけ、輸出企業の収益見通しは改善し、業況判断DIを押し上げる方向に働いたと考えられる」
「しかし実際には、自動車、電気機械、業務用機械など、代表的な輸出関連の業況判断DIは大きく悪化した。この点から、今回の短観調査は、円安は全体として日本経済にプラスとする日本銀行の主張には不利な結果になったと言えるのではないか」

   つまり、日銀自身の調査(短観)が「円安は日本経済にプラス」としてきた日銀の主張を裏切る結果になったわけだ。木内氏は、こう批判する。

「物価を押し上げる『悪い円安』を引き起こしているとして、日本銀行の政策に対する批判も高まってきた。今回の短観では、円安進行の下でも輸出企業も含めて企業の景況感が顕著に悪化したことを背景に、『円安は全体としては日本経済にプラス』として、事実上、円安容認姿勢を続ける日本銀行の説明への批判がこの先一段と高まる可能性があるだろう」
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