日銀「指値オペ」で円安加速! なぜ?あえて物価高の痛みで賃上げ狙い?...エコノミストの指摘とは

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「岸田政権の財政出動対策も返って物価上昇に」

   同じく、「物価対策に財政出動で応じようと岸田政権の経済政策と、円安に対して寛容な姿勢をとる日銀の金融政策は矛盾する」と、両者の対立を指摘するのは、第一生命経済研究所の首席エコノミスト熊野英生氏だ。

   熊野氏のリポート「弾みがつく円安の行方~日銀の指値オペが後押し~」(3月30日付)のなかで、「不可解なポリシーミックス」だとして、こう説明する。

   3月上旬に1ドル115円前後だったところから、3月下旬には一時125円まで進んだ=図表1参照。岸田文雄首相は3月29日、4月末までに物価高対策を柱とする緊急経済対策をまとめるよう、閣僚に指示。一方、日銀は29日から指値オペを開始している。

(図表1)ドル円の推移(第一生命経済研究所の作成)
(図表1)ドル円の推移(第一生命経済研究所の作成)
「その食い違いを少し丁寧に説明すると、岸田政権は参議院選挙を前に、物価上昇が国民生活を脅かすと恐れている。日銀は、何もしなくても消費者物価が前年比2%に達するとしても、さらなる円安があったほうがよいと考えて、日本の長期金利の上昇を、0.25%を上限として抑えにかかる。円安が輸入物価を押し上げることを日銀は歓迎しているのだろう」

   この構図は、日銀が物価上昇に寛容で、岸田政権は物価上昇に頭を悩ませており、明らかに姿勢が食い違っている。しかし、経済分野の専門家からみると、両者とも物価上昇に拍車をかける点では同じ図式だというのだ。いったい、どういうことか。熊野氏はこう解説する。

「政府が物価上昇に財政出動で応じると、かえって需要刺激になって物価上昇が加速することになる。(中略)筆者から敢えて言えば、岸田政権のポリシーミックスは、金融緩和+財政刺激という物価押し上げの構えになる。物価上昇が加速すると、ますます財政出動で応じるのだろうか。そして、さらに国内発の物価上昇圧力が高まると、通貨安が起こるという悪循環になる。経済学の知見は、そう教えてくれる」

   では、どうすればよいのか。

「本来は政府・日銀が口先介入を行って、『これ以上の円安は望まない』と情報発信すれば、いくらか円安は押し戻されるはずだ。しかし、日銀の連続指値オペは、そうした考えとは違うものだろう」「日銀の意図を深読みすると、4月以降の消費者物価上昇をもっと押し上げたいということだろう。(中略)日銀は、たとえ国民が感じる物価上昇の痛みが起きたとしても、仕方がないと割り切っていることになる」

   それにしても、「物価上昇の痛み」を容認する日銀の狙いは何か。熊野氏はこう推測する。

「日銀は(中略)物価トレンドを上向かせるツールは、円安を通じた刺激効果しかないと考えているのだろう。確かに、政府の賃上げ促進にも、さらなる円安の後押しがあるとプラスに働く。勤労者が円安の痛みを強く意識するほど、賃上げの要求を強めるから、円安は必要悪ということになる。筆者は、そこまで円安に期待していると考えなければ、今、なぜ日銀が敢えて連続指値オペに動くのかという説明が付かないと考える」
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