所有する株式数に応じて、投資先の割引券や優待券、あるいは食料品やオリジナルグッズなどを受け取れる株主優待。楽しみにしている個人株主も多いことだろう。
ところが、同じ会社の株式を長年持ち続ける人にとっては、いつも同じ株主優待品ばかりで、もらえることはうれしいけれど、ホントは自分の好きな商品を選べたらいいのに......といった気持ちにもなるもの。
そこで、個人投資家のそんな希望に応えるサービスがある――。その名も「プレミアム優待倶楽部」。株主管理プラットフォーム事業の「IR-navi」「バーチャル株主総会」などを手掛けるウィルズ(東京都港区)が運営している。
「プレミアム優待倶楽部」では、上場企業が株主優待として「ポイント」を発行し、それを集めると、さまざまな優待商品と交換できる。導入企業にとっても、電子会員化による多くのメリットが得られる。
ありそうでなかったこのユニークなサービスは、どうして生まれたのだろうか。ウィルズの代表取締役社長 CEOをつとめる杉本光生(すぎもと・みつお)さんに聞いた。
企業は自社株を誰が持つのか把握したい
――そもそも、杉本さんが起業した経緯とは何だったのでしょうか。
杉本光生さん「当時の状況をおさらいすると、いまでこそIR――企業が投資家に向けた情報発信、コミュニケーションは企業経営において重要な活動の一つですが、私がIR業界に入った1990年代前半、30年前の日本ではそこまで浸透していませんでした。なぜか? おおまかに言うと、当時は株の持ち合いの関係から、経営陣は銀行を向いていたのです。
しかし、この構造は1990年代後半の金融ビックバン以後、急激に崩れます。それにより経営者は、市場と向き合わなければ生き残れない、と投資家を向くようになったのです。一方で、同時期に銀行が大量に売り出し始めた株式の受け皿になったのが、外国人投資家。以後、日本株に対する外国人の持株比率はジワジワと高まり出し、日本企業の経営陣は危機意識を持ち始めます。欧米流の『もの言う株主』の存在を恐れたからです。それにともない企業側は、自社の株式を誰が持っているのか知っておきたい、という要望が出てきました」
――1990年代後半に、急激な環境の変化が進んだわけですね。
杉本さん「ええ。そうした背景から私は、これからの時代、株主(国内機関投資家、外国人機関投資家、そして個人株主)と企業の対話、コミュニケーションは重要度を増すな、と思いました。しかも、1990年代後半のIT化の流れで、コミュニケーションの取り方は、インターネットを活用していくことになるだろう、とも予想されました。そこで、株主を分析できるデジタルツールがあれば、日本の上場企業は必要とするはずだ、と私は考えました。そうして開発したのが株主管理プラットフォームの『IR-navi』。世界中の機関投資家のデータを搭載しています。おかげさまで現在、日本の上場会社300社以上に利用いただいています」
――起業後、個人株主のデータベース化については、どのような取り組みをしたのでしょうか。
杉本さん「それがですね、個人株主のデータベース化は、ハードルの高い課題となりました。個人株主のデータベース化を目指して、個人株主に呼び掛けて会員登録してもらうウェブサービスを始めましたが、登録者が伸びずに、一度撤退しています。でも、企業側からは、個人株主の属性を知りたい、データとして管理したい、というニーズは引き続きありました。私たちとしても、なんとか課題解決したいテーマでした。結論から言うと、このあたりが『プレミアム優待倶楽部』の発想につながっていきます」