「天までも味方につける先導者を目指そう」
慶応義塾大学の伊藤公平塾長は、自分が慶応義塾大学を卒業した1989年、天安門事件が起こり、ベルリンの壁が崩壊した激動の年に見舞われた。だが、それ以上に大変な年に皆さんは卒業すると呼びかけた。
「皆さんが経験したコロナに続くウクライナ危機は、実に桁違いの事象であり、次元が全く違う歴史の一大転換につながるものだと、私は感じています。今ほど、私たちひとり一人が、先導者としての自覚と行動と責任を全うすることが大切なことはありません」
そして、「先導者」には3つの条件があると、こう語りかけた。
「1つ目は常に挑戦する、ということです。現状に満足して自分の幸せだけを追求する利己主義に陥ると社会は後退します。新しいことに挑戦して、その中で社会の先導を意識するということです。『それは先導につながるか?』と自ら問いかけてください。そして、挑戦を支えるのは常に学ぶ力、まさに『学問のすすめ』です」
「2つ目は世界に出る、ということです。自分の判断や行動が、今後の社会全体にどのような影響を及ぼすか。良い影響と悪い影響、さまざまなシナリオを想像するためには、広い世界を知らなければなりません。広い世界に踏み出して、世界レベルの知見とネットワークを有する先導者を目指しましょう」
「3つ目。これが先導者として一番大切なことかもしれません。『祝福された先導者』になってほしいということです。『この人と一緒なら楽しく自然に新しいことに挑戦できる』『この人と一緒なら、明るい家庭、学校、会社、地域、国、世界が作っていける』と思ってもらえる人間を目指しましょう」
「祝福された先導者」について、さらに詳しくこう説明した。
「高い志を持って誠実に人生を生きる。その裏では、最悪の事態も想定して、さりげない準備を怠らない。家族や友人が応援してくれることは大切なことですが、(中略)初対面でも、この人と一緒に仕事したい、活動をしたいと思われる人。大げさにいうと天までも味方につける人を目指そうということです。これこそが慶応義塾大学が目指す気風であり、私が考える『祝福された先導者』であります」