一時はよく「ブランド戦略」という言葉を聞いたものだ。でも、そもそもブランドに効果があるの? と疑問を持っている人もいるだろう。本書「超実践! ブランドマネジメント入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ブランドには絶大な効果があると説いている。読めば、ブランドについての誤解も解けるだろう。
「超実践! ブランドマネジメント入門」(上條憲二著)ディスカヴァー・トゥエンティワン
著者の上條憲二さんは、愛知東邦大学経営学部教授。世界的なブランドコンサルティングファームであるインターブランドの日本法人でエグゼクティブディレクターとして多くの企業のブランド戦略を担当した。2014年から現職。日本ブランド経営学会会長。
ブランドマネジメントは、経営戦略そのもの
インターブランドではブランド価値の高い企業を分析し、ブランドには以下のような効果・効能があると発表したという。
それによると、対外的にはChoice(チョイス:選ばれる)→顧客から選んでもらえる、Premium(プレミアム:高価な)→高くても買ってもらえる、Loyalty(ロイヤルティ:忠誠心)→買い続けてもらえるという効果。
また、対内的にはAttract(アトラクト:惹きつける)→社員が魅力を感じる、Retain(リテイン:とどめておく)→社員が転職しない、Motivate(モチベート:動機を与える)→社員がやる気になるという効果。最近では、社員が「生きがい」「働きがい」を感じることによって、心身が健康になる効果もわかっている。
ブランドは広告やPRなどで認知を拡大し、よいイメージを持ってもらうプロモーション戦略の一部にとどまらず、企業資産の一部――言い換えれば、企業の経営戦略そのものに大きく関与するものである、という認識に変わってきたことを紹介している。
自社のブランドコンセプト(ブランド理念)に基づき、経営を行っていくのが「ブランド経営」という考え方だ。
そもそも、ブランドとは何か? 上條さんは、「頭の中にある確固たる存在」のこと、と説明。そして、頭の中にある「イメージの貯金箱」とたとえている。ロゴマークはその目印であり、「イメージの貯金箱」を開けるカギだ。
ブランドを日本語では「らしさ」と言い換えている。〇〇らしい活動、〇〇らしい製品などと言い換えるとわかりやすい。顧客は製品やサービス、社員、広告、店舗、経営者など、いろいろな要素を見て、「らしさ」を判断している。
では、ブランディングは具体的にどう進めるのか? 10段階のステップを説明する。
1 ブランド、ブランディングの基本を知る
2 組織内にブランディングの機運をつくる
3 進めるための組織をつくる
4 自分たちはどこにいるのか環境を見つめる
5 分析を経て、進む方向を考える
6 ブランドの基盤をつくる
7 ロゴマーク、デザインなどの「伝え方」をつくる
8 「らしい活動」を考える
9 ブランドをデビューさせる
10 成果を活かす