外泊したら家賃が値引きされたり、定額制でさまざまな地域に移り住めたりするなど、多様な形の賃貸住宅が増えている。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、働き方やライフスタイルが急速に変化するなか、個人の多彩なニーズに対応しようという動きの一環といえる。
外泊した日は部屋をホテルに貸し出し
東急などが2022年3月から拡大展開を始めた賃貸住宅「Re-rent Residence(リレントレジデンス)」が注目されている。
入居者が外泊した日は、その部屋をホテルとして貸し出すことができ、外泊日数に応じて家賃が減額されるという斬新なシステムだ。2021年夏に東京都渋谷区で始めたところ、募集した部屋数の約5倍の問い合わせがあるなど好評で、新たに墨田区でも実施することにした。
入居者は外泊する際に事前にアプリで申請し、運営側のスタッフが宿泊者を探す。たとえ宿泊者がいなくても入居者の家賃は減額される。墨田区の物件の場合、1日の外泊で3000円が差し引かれ、月15日まで適用される。家賃が月11万2000円の部屋なら、15日外泊すれば4万5000円が引かれ、実際の家賃は月6万7000円になる。
外泊する日は運営スタッフが部屋を清掃し、入居者の私物は鍵付きの収納に保管できる。東急は今後、対象物件を拡大したい意向だ。
定額料金で、好きな場所の賃貸住宅に自由に住むことができる会員制のサブスクリプションサービスも広がっており、「アドレス」や「クロスハウス」など、事業者は増えている。
アドレスの場合、月4万4000円を支払えば、日本各地の140か所以上の物件に住み放題という。空き家をリノベーションして有効活用しているのもアドレスの特色だ。
定額サービスなら、賃貸契約などの手続きは必要ない
定額制サービスを利用すれば、通常の賃貸住宅を借りる時のように敷金や礼金などはかからず、初期費用を抑えられるうえ、賃貸契約など面倒な手続きも必要ない。平日は勤務先の都市部に住み、週末は緑豊かな地方に住むなど、うまく使い分けて生活を楽しむ人も多いといい、「コロナ禍でテレワークが拡大した結果、定額制の人気はいっそう高まっている」と話す住宅関係者もいる。
一方、パナソニックは2022年1月、賃貸物件を対象に、最新の洗濯機や冷蔵庫、調理家電などを定額で利用できるサービスを開始すると発表した。入居者は自分で家電を購入する必要がなく、高品質の家電を楽しめることになる。
日立キャピタル(現・三菱HCキャピタル)と旭化成ホームズ、シャープは22年度から、賃貸住宅や家電、家事代行などのサービスを定額で一括提供する事業を開始する予定だ。
さまざまなサービスが増えていくなか、住宅は所有するものではなく、うまく利用して豊かに暮らすためのツールに変わっていく可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)