新型コロナウイルス禍で乗客が大幅に減った航空業界で、国境を越えた行き来の回復を見据えた動きが始まっている。
ANAホールディングス(HD)は2023年度下期にも運航を始める中距離国際線の新ブランドについて、名称を「AirJapan(エアージャパン)」に決めた。料金設定は格安航空会社(LCC)並みとするが、新ブランドはLCCではないという。その狙いは何か。
LCC成功例の「ピーチ」の強みと弱点をヒントに
ANA HDが運航する国際線はフルサービスの「全日空」とLCCの「ピーチ」があり、新ブランドとなったAirJapanを「第三の国際線ブランド」と位置付ける。新ブランドの立ち上げは2020年秋に表明していた。運航は、すでにアジア路線をANAブランドで手掛けているANA HD傘下のエアージャパン(千葉県成田市)が担う。
2022年3月8日に記者会見したエアージャパンの峯口秀喜社長は、新ブランドを「お手頃価格」で提供するが「LCCではない」と説明した。この背景を読み解くには、日本のLCCの先駆者であり、成功例となったピーチの強みと弱点を知る必要がある。
関西国際空港を拠点とするピーチは、2012年に運航を開始した。搭乗手続きを省力化したり、機内サービスを有料化したりしてコストを削減。日時によっては高速バス並みの料金を実現して、交通手段の選択の幅に大きな変化をもたらした。まずは国内線から手掛け、後に国内と韓国や台湾などを結ぶ路線を開設していった。
安さでは利用者の支持を得たピーチだが、実際に搭乗してまず感じるのは、客席の足元の狭さだ。海外で先行した航空会社も同じだが、LCCは料金を安く抑えるために機体にできるだけ多くの乗客を乗せるため、客席の間隔を狭めるのが通例だ。ピーチの就航路線は片道4時間以内を念頭に置いており、その時間ならば料金と天秤にかけて許容できる客席の狭さというわけだ。