知的生産の「5つの大前提」とは
現代の知的生産に必須の「5つの大前提」も参考になるだろう。
1 世の中にたくさんあるメディアを分別するところから始めよう。
2 分別したメディアを活用して、「ニュースを読み解く流れ」をつくろう。
3 読む目的は、「たくさんの視点を獲得すること」と肝に銘じよう。
4 読むことで得た「知識」「視点」を「知肉」にするのが最終目標。
5 無理に集中しようとするのではなく、あえて「散漫力」を逆活用しよう。
ウェブ、新聞、有料メディア、SNSの使い方も詳しく紹介している。そのうえで、ツイッターを重要な情報源と考えている。「まっとうな専門家」かどうかを見分ける追跡メソッドを公開している。自分の専門知識がない分野の記事が出たとき、その妥当性を5段階で評価するものだ。
1 その記事について、ツイッターでどうコメントされているか
2 それらのコメントは、専門的見地からのものかどうか
3 それらのコメント投稿者のプロフィールはどうか
4 それらのコメント投稿者は乱暴な言葉づかいをしていないか
5 これらの基準をクリアした専門家はフォローし、リストに入れる
この方法で、さまざまな分野で「信頼できるツイッターリスト」をつくっていけば、専門外の分野でも情報源をつくることができるという。 ほかにも、RSS(リッチ・サイト・サマリー)リーダーを使って、新着の記事の見出しをまとめてチェックする方法、仕込んだ情報をポケットなど「あとで読む」アプリを使い活用する術も紹介している。
本書の意義は、こうしたノウハウを公開していることだけではない。つまるところ、何のために、知的活動を行うのか根源的な問いかけをしている。「学び」の本質とは何か? 佐々木さん自身は、「仕事も暮らしも自分の人生として全体最適化し、あらゆる知識も自分の知肉として全体最適化する」ことと考えている。「知」の本質論と実践論が絶妙のバランスで書かれている良書だ。すべての知的生活者にお勧めしたい。
(渡辺淳悦)
「現代病『集中できない』を知力に変える 読む力 最新スキル大全」
佐々木俊尚著
東洋経済新報社
1760円(税込)