50代、40代、20代で増加...経済・生活問題影響か
さて、年齢階級別の自殺者数の動向を見ると、2020年には50代、60代を除き、すべての年代で自殺者が増加したが、2021年には50代、40代、20代だけが増加している。
とくに、50代は前年比193人(5.6%)増の3618人と全体の17.2%を占め、次いで40代の同7人(0.2%)増の3575人が全体の17.0%、20代は同90人(3.6%)増の2611人となった。
なぜ、50代の自殺者が急増し、また、20代が増加したのか――。自殺の多くは多様かつ複合的な原因および背景を有しており、さまざまな要因が連鎖する中で起きている。ただ、自殺者の職業と自殺の原因・理由を見ると、朧気ながらも要因が浮かび上がってくる。
2020年の自殺者では、無職者が前年比373人(3.3%)増の1万1718人、勤め人等が同540人(8.7%)増の6742人、学生等が同151人(17.0%)増の1039人となった。その一方で、自営業者等だけが、同144人(10.2%)減の1266人と減少していた。
ところが、2021年には、無職者が前年比79人(0.7%)減、勤め人等が同50人(0.7%)減、学生等が同8人(0.8%)減といずれも減少する中で、自営業等が同32人(2.5%)増の1298人と増加に転じている。
自殺の原因・理由を見ると、2020年にもっとも多かった「健康問題」は前年比で335人(3.3%)も減少し、9860人。一方で、「経済・生活問題」は160人(5.0%)も増加し、3376人となっている。
あらためてまとめると、2020年には新型コロナによる雇用悪化の影響から、就職難となった学生、雇用調整にあった勤め人等の自殺者が増加した。これに対して、2021年には雇用調整が一定程度終わり、学生や勤め人等の自殺者は減少したが、自営業等への新型コロナの影響が続いている。それにより、自営業者の中心層である50代や経済・生活問題による自殺者が増加したのではないか、と類推される。
経済・生活問題での自殺者が増加しているのであれば、政府の経済支援策などにより、自殺者を減らすことができたはずだ。
2022年の自殺者が増加しないように、政府は弱者に対する十分な経済支援を行っていくべきだ。