『人間の器』大きくする研修を!
――ところが、リモートワークが取り入れられたいま、意識的に気づいていかないといけませんね。
星野さん「コロナ前はオフィスにいると、日常的に雑談をしていたはずで、それがお互いの仲を深めたものです。リモートワークではそういう『ちょっとしたコミュニケーション』がなくなってしまった。表情がわかりにくい、というのかな。いま、社員の抱えている悩み、相談事をキャッチしづらい、という課題もあります」
加瀬さん「たしかにコロナ前は、集団の中で自然に出る会話によって、解決される世界があった気がします。解決しようと思って話をすると、意外と解決しない......。リモートワークのよくないところは、そこかもしれないと思います。
たとえば、ウェブ会議では、テーマを絞りますよね。アジェンダが用意されますよね。もちろん、ビジネをドライブさせていくためにも、そういう時間は大事です。でも、やり方次第だと思いますが、テーマ決めずに雑談する日や時間があってもいいのかもしれません。 とくに、若手社員はどうしても構えてしまう。テーマが決まっていたら、それ以外は喋ったらいけないと思ってしまう。これがもう少し年齢や立場が上なら、なんでも喋って、すっきりして帰っていく(笑)。そのあたりは、リモートワークやウェブ会議では考えないといけない課題です」
――コロナ禍で見えてきた「社員研修」のあり方、そして、若手社員への期待について、お二人はどう考えますか。
星野さん「社員研修については、意図的に『場』を設定したほうがうまくいく気がします。キーワードは『つながり』です。コロナ禍の影響から、リモートワークの導入などで働き方が変わり、個々の人が分断されてしまったところがあると思います。だからこそ、『つながり』をどうつくるかが大事。人事部門としてできる限り、その場を用意していきたい。若手社員への期待としてはぜひ、組織を超えて価値を生み出すとか、いろんな人を巻き込んで活躍するような、『つなげられる人』になってほしいと思います」
加瀬さん「コロナ禍で働き方が変わってきて、会社として教えるべき最も大事なことはヒューマンの部分ではないか、という考えが深まりました。共感する力とか、気配りする力とか......『人間力』と言い換えられるかな。あるいは、星野はよく『人間の器』という言い方をしています。
仕事上必要なスキルを身に着けようとしたら、やろうと思えば自分一人でやってやれないことはないでしょう。でも、人間力を高める/人間の器を大きくすることは一人ではできません。なぜなら、人間力/人間の器は自分らしい価値観にもとづくものだから。そしてそれは、人と触れ合うことで生まれてくるものだと思います。そのためにも、人と会ってコミュニケーションをはかることが大事だったんだなと。コロナ禍のなか、会って話す機会が減ったことで、あらためて気づかされました」
――新しい「気づき」となったわけですね。これから御社では、そうした育成に力を入れていくのでしょうか。
「はい。さきほど弊社では、現場で活躍する社員その人ならではの価値観を伝える場として『●●塾』が根づいている、とお話させていただきました。そして、そういった社員がたくさんいるという人的な強みを残していくことが、会社としても人材業界としても大事ではないかと考えています。そんな思いから2022年4月、企業内大学『テンプユニバーシティ』をプレ開校する予定です。ここでは、講師も生徒も弊社の社員。人間の器を大きくする場となることでしょう。そして、こうした取り組みがいまこそ大事だと、社会に向けて伝えていけたらと思っています」
――ありがとうございました。
(会社ウォッチ編集部)