2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻で、仮想通貨(暗号資産)の役割が改めて注目されている。ウクライナが支援資金獲得に活用し、成果を上げている一方、金融制裁を受けるロシアも制裁逃れに活用しているとされる。
ウクライナへの支援で集まった仮想通貨100億円超
ウクライナは近年、IT産業が世界から注目されている。人件費が安い割に、教育機関や人材が比較的豊富だからだ。ロシアの侵攻を受け、国内のみならず、世界からも志願兵ならぬ「志願技術者」が結集した「ウクライナIT軍」がロシアや友好国ベラルーシにサイバー攻撃を仕掛けていると伝えられている。SNSを効果的に活用して、世界に向けロシアの非人道的な攻撃を告発するなど、宣伝戦ではロシアを圧倒している。
資金集めでもデジタル技術を駆使しており、クラウドファンディング(ネット募金)に取り組んでいる。送金が簡易な「アップルペイ」や米ペイパルの「ベンモ」などのほか、とくに力を入れているのが仮想通貨だ。ロシア侵攻後、ウクライナのミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相は、献金先となるビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨のウォレット(財布)のアドレスをツイートして献金を呼びかけた。
シンガポールに拠点を置く仮想通貨取引のリサーチ会社Merkle Scienceによると、3月8日までにウクライナへの支援として世界中から集まった仮想通貨は9000万ドル(約100億円)に達し、その後も増え続けているという。
ウクライナの人々への直接の助けにもなっている。日本からウクライナへの送金は、ロシアの侵攻後、通常在日外国人か利用する米国など、海外の送金サービスが利用できなくなった。だが、邦銀からの送金は、マネーロンダリング(資金洗浄)対策で資金の出所や使途、送金先の人の状況などの確認に時間がかかり、なかなか利用しづらいという。その点、仮想通貨は手間がかからず、短時間で送金できる。
ロシア軍の攻撃でウクライナ国内の銀行業務はまひ状態とされ、どこにいても受け取れる仮想通貨は海外からの貴重な送金手段となり、友人への送金などで活用する人も多いといわれる。