新型コロナのオミクロン株感染が収束に向かいつつあるなか、就職活動もようやく本格化し、水面下では2023年卒業の大学生の就職活動が佳境を迎えている。就活生はどんな企業の、どこに注目しているだろうか――。
就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが、関東を中心にした、いわゆる上位校とされる9大学の「23卒就活生が選ぶ、就職注目企業ランキング【大学別編】」を、2022年3月23日に発表した。
東大と京大、そして早稲田大&慶応大、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の9大学。それぞれの大学生が選んだベスト20位の企業から見えてくるものは――。
東大・京大とも1位は野村総研、京大は地域色豊か
「OpenWork」は、会員ユーザーが自分の勤務している企業や官庁などの口コミ情報を投稿する国内最大級の口コミサイトだ。社会人のほか、企業の就職情報を得ようとする学生ユーザーも多く登録している。今回の調査は、すでに登録している上位校といわれる9大学の2023年卒業予定の学生ユーザー合計約2万5000人が、「特にどの企業を多く検索したか」を調査してまとめたものだ。
まず全体的に見て、各種の就職希望ランキングでは常に上位に入る総合商社の人気が凋落していることが目立つ。今回の調査で上位20社にランクインしたのは三菱商事(東大生8位、早慶学生14位)の1社だけ。これまで多くの調査でトップクラス常連の伊藤忠商事は、ランク外だった。働き方改革が進んだことで、昭和の「モーレツ社員」と年功序列の気風を色濃く残すとされる総合商社は敬遠されているのだろうか。
代わりに上位を占めたのは、日系、外資系を含めてコンサルティング会社だ。とくに東京大学と京都大学では、ともに国内最大級のコンサルティング会社の野村総合研究所が1位だ。東大生のランキングでは、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループといった外資系を中心に、コンサルティング会社が全21社中7社と3分の1を占めた。
一方、京大生のランキングでは、関西電力、サントリーホールディングス、パナソニック、島津製作所、トヨタ自動車、JR東海といった、関西や中京に本社を置く企業が多くランクインして地域色を出しているのが特徴だ=図表1参照。
それぞれ、どういった働きがいや成長環境があるのか、新卒入社した社員のクチコミから見ていくと――。
野村総合研究所「さまざまな業界の大手企業の重要ポジションにいる方と、若いうちからともに仕事をできることは非常にやりがいがあるし、自身の勉強にもなる。若いうちからさまざまなプロジェクト経験を積ませてもらえることはキャリア形成にとっても非常に有用であり、貴重な経験になる。周囲も優秀な人材が多いため、互いに刺激を与えながら成長していくことができる」(コンサルタント、男性)
マッキンゼー・アンド・カンパニー「社員の成長をとても大切にする文化は非常に感じられます。例えば新卒1年目でも、週次で1on1をチームマネージャーとはもちろん、チームディレクターとも行う機会はとれますし、それをとるべきだという空気が社内でしっかりと醸成されています。若者だからと舐めて扱われるわけでもなく、しっかりとひとりのビジネスパーソンとして誰もが他人を尊重するところが非常によく、かつ、それがこの会社の強みなのではないかと考えることも多くあります」(コンサルタント、男性)
サントリーホールディングス「日本だけでなく世界中の人が知っている飲料メーカーであるというだけで、ある意味、働くモチベーションになりました。お酒、ジュース、健康食品などなど、商品の幅も広く、感想が身近にあふれているところもモチベーションの一つかと思いました。研修や人事制度が整っていて、部署異動の希望もいずれ聞いてもらえることが多い印象です」(企画職、女性)
島津製作所「入社まではイメージがあまりわかなかったが、自社の機器が社会に貢献しているニュースやプレスリリースをみると、事務職であってもこの会社で働いてよかったと感じる。各種研修などはひと通り揃っている印象。自己啓発のメニューもいくつかあるので、学ぼうという意思があれば、自分で色々と学ぶことができると感じる」(事務職、男性)
コンサルが人気の早慶、ITに注目が集まるMARCH
さて、早稲田・慶應とMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)の両ランキングはどうだろうか。まず、MARCHのランキングを見ると、富士通や楽天グループ、エヌ・ティ・ティ・データ、サイバーエージェントなどIT大手がランクインしたことが目立つ。
また、早稲田・慶應のランキングでは、PwCコンサルティングやアクセンチュア、アビームコンサルティングといったコンサルティング会社が多くランクイン。東大・京大と同様、ここでもコンサルティング会社の強さが表れている=図表2参照。
それぞれの企業の魅力を口コミから探ると――。
楽天グループ「サービス数が多く、社内でのオープンポジションも利用できるため、多くの経験ができると思う。部署、サービスにより開発スタイルも大きく変わるため、社内においても転職に近い異動ができる。また、希望もよく聞いてもらえる印象。英語を使う機会が多いため、英語能力を活かしたい、英語を勉強したい、という思いがある人にもよいのではないか」(開発、女性)
サイバーエージェント「キャリアに悩んだりした際に上長・同僚に率直に相談できる文化がある。その際、ただのガス抜きだけではなく、次のチャレンジの打診 や、現状の部署でできる違う取り組みなどをセットで打診してくれる。前向きなチャレンジであれば、基本的に称賛を惜しまない。部署異動願いを出した際、応援してくれることが多く、チームサイバーエージェントという価値観が浸透している。長く働けるベンチャー企業という観点では申し分ない」(広告営業、男性)
PwCコンサルティング「クライアントの重要な意思決定に携わることができる。カウンターパートは主任や課長、部長レベルの方となるため、社会人なりたての 人間は学びが多い。一人一人にコーチが付くため、自身のキャリア形成の相談をする環境は整っている。所属部署で自身が望む専門性を身につけることが難しいと感じれば、所属部門を変えることも可能であり、キャリア開発を会社が支援する環境は整っていると思う」(コンサルタント、男性)
デロイト トーマツ・コンサルティング「新卒研修後すぐにプロジェクトに配属され、一通りのビジネススキルをOJT(職場内訓練)で学ぶ。他のファームと異なり、育てる文化が根付いているため、無理なく成長できる。そしてクライアントもわが社を評価してくれることが多いので、やりがいがある。育成制度はしっかりしている。他社より研修やフォローアップが手厚いと思う」(コンサルタント、女性)
若手を育てる環境が整っていることも大事な要素のようだ。
調査は、OpenWorkに登録している2023年卒業予定の学生ユーザー約13万6000人の中から対象大学を限定して集計した。内訳は東京大学(2486人)、京都大学(1704人)、早稲田大学(4783人)、慶應義塾大学(4013人)、MARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学、合計1万2422人)。
(福田和郎)