なぜ、いつもの「Tシャツ姿」ではなく「長袖」だったのか?!
いまや世界中が「今度は何を言うのか?」と注目しているゼレンスキー氏の演説。各国でスタンディングオベーションを巻き起こし、まるで議会ジャックのような様相を呈していますが、時折発するストレートな批判も少なくありません。日本と同日に行われた仏議会の演説では、ロシアで稼働を続けている企業名を上げて、痛烈に批判しました。
すでに多くの人に知られていますが、コメディアン出身のゼレンスキー氏は人々の気持ちを掻き立てる術に優れていて、各国向けの演説も「highly tailored messages:BBC」(練りに練ったメッセージ)だという評価が一般的です。
BBCはゼレンスキー氏の演説画像を並べて、「演説内容だけでなく、無精ひげや服装、こぶしの振り上げ方、背景など、すべてが計算されている」と分析していますが、そこで気になったのがゼレンスキー氏の服装です。
Tシャツ姿が「代名詞」のようなゼレンスキー氏ですが、長袖の服を着ていたのは日本とドイツだけ。さらに、ドイツの時は襟を開いたくつろいだシャツ姿でしたが、日本向けでは襟元をぴっちりと上まで閉めていました。日本の後に出演したフランス議会ではいつもの「Tシャツ姿」に戻っていましたから、意図的に長袖姿を選んだと思われます。
加えて、イスラエルやイタリア、フランス向けの演説では大きなジェスチャーと豊かな表情が目を引きました。BBCの分析どおり「すべて計算づく」だとしたら、長袖姿は「かしこまった装い」と「落ち着いた話ぶり」で日本の反感を買わないようにする「作戦」だったのでしょうか?
それでは、「今週のニュースな英語」は、ゼレンスキー氏の演説から「call for」(~を要求する)を取り上げます。
Trade unions call for nationwide strike
(労働組合は全国的なストライキを要求した)
The trip to NY calls for a lot of money
(ニューヨークへの旅行は高くつく)
Zelensky calls for a cease-fire
(ゼレンスキー氏は停戦を求めている)
国会演説後の国内メディアは、まるでゼレンスキー氏にジャックされたかのような様相です。批判的な反応は見受けられないようですので、「長袖姿」に代表されるゼレンスキー氏の「日本向け作戦」は「成功」だったのではないでしょうか。
(井津川倫子)