年金受給者への5000円「臨時給付金」案...バラマキ批判殺到で政府・与党真っ青

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「ここまで評判が悪いとは思わなかった」

   政府・与党が頭を抱えているのが、与党が物価高対策として打ち出した年金生活者に一律5000円を配る「臨時給付金」支給案だ。

   この動きが明らかになった途端、「7月の参院選に向けた露骨なばらまきだ」と批判が殺到。与党からの実施要請に「しっかり対応したい」と応じていた岸田文雄首相も国会で連日、野党の追及を受けるはめに陥っている。

  • どうなる5000円給付案(写真はイメージ)
    どうなる5000円給付案(写真はイメージ)
  • どうなる5000円給付案(写真はイメージ)

「評判悪い」要因に...不公平感、費用の問題

   公的年金の支給額は、物価と賃金の動きを踏まえて毎年度、改定されるものだ。2022年度は新型コロナウイルス禍で現役世代の賃金が下がったことを反映し、21年度に比べ0.4%引き下げられることが決まっている。

   これに対し、物価はロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高などが影響し、上昇基調が続いているが、ここにきての物価上昇が年金に反映されるのは23年度だ。このため、「物価高で負担が増えるにもかかわらず、年金支給額が減る高齢者世帯を支援すべきだ」として打ち出されたのが臨時給付金というわけだ。

   この評判が悪い要因は複数ある。

   まずは、不公平感。物価高の影響を受けるのは、年金生活者だけではない。子育て世代も独身者も同様だ。政府が総合的な物価高対策を打ち出す前に、年金生活者の支援だけが先行して決定するかのような状況が「投票率の高い高齢者の票目当てだ」という連想につながった。

   次に、事業費の問題だ。年金受給者に5000円を配るとすれば、単純計算で1300億円前後の費用がかかる。政府・与党は今回、昨年秋の経済対策で打ち出した貧困者世帯に10万円を配る「臨時特別給付金」対象となった年金受給者は対象から外す方向だ。給付金の「二重取り」との批判をかわす狙いだ。

   ところが、支給対象者に制限を設けることで事務経費が余計にかかることになり、その費用だけで100億円を優に超えるとみられている。所得制限を設けたことで事務経費が膨れ上がり、国民の怒りを買った18歳以下に対する10万円支給案と同じ失敗を繰り返すかたちだ。

物価高騰に対応するため追加経済対策

   格好の「敵失」に、野党は攻勢を強めている。立憲民主党は3月22日、給付金の支給中止を政府に要請し、国会でも厳しく追及している。

   逆風が強まる中、岸田首相も「経済や生活の状況全体を見る中で、必要かどうか検討したい」とトーンダウンした。政府・与党内にも「これほど批判が強い以上、当初案通りに実行するわけにはいかないだろう」(官邸関係者)と方針変更は「やむを得ない」との声が強まりつつあり、5000円支給案はいったん取り下げられる可能性が強い。

   ただ、与党がこれで引き下がる気配はない。2022年度当初予算が3月22日に成立したことを受け、岸田首相は月内にも物価高騰に対応するため追加経済対策の検討を本格化させる方針だ。与党からは「少なくとも10兆円規模の対策が必要」など、大規模化を求める声が強まっており、参院選に向けたばらまき型の編成になることは確実だ。

   「高齢者対策は形を変えて対策に潜り込ませればいい」。ある与党関係者こうつぶやいた。

   こうした選挙狙いの思惑が見透かされたことが、5000円支給案が猛批判を浴びた最大の理由かもしれない。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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