年収1000万円以上世帯で7~8万円の負担増
食料品を中心とする生活必需品の価格はどこまで高騰するのだろうか。その影響を具体的に年収階級別に試算したのが、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部経済調査チームの南陸斗氏と嶋中由理子氏だ。
2人のリポート「ウクライナ危機で生活必需品価格が高騰~低所得者の生活支援が求められる~」(3月22日付)のなかで、低所得世帯ほど相対的に重い負担がかかることを明らかにした。
2人は、図表3のように、4月以降に値上げラッシュが本格化するとして、非常に緻密な家計への影響を試算した。試算にあたっては、ウクライナ情勢が流動的なため、2つのシナリオを想定した。それが、次の2つのケースだ。
(1)シナリオ1=ロシアからの必要最小限の資源(石油や穀物など)輸出が続く「供給継続シナリオ」
(2)シナリオ2=ロシアからの資源輸出が停止する「供給停止シナリオ」
また、政府は現在、原油価格高騰に対応するため、1リットル当たり25円の補助金を石油元売り会社に出すなど、「燃料油価格激変緩和事業」を行っている。「激変緩和事業」は3月31日に期限を迎えるが、4月以降も継続されると想定して試算に加えた。
試算結果をみると(図表4参照)、食料・エネルギー価格の高騰により、2022年は激変緩和事業の効果を考慮したとしても、平均的な世帯で年間約5.5万円~6.2万円の負担が増加する。年収別にみると、年収300万円未満世帯では「シナリオ1」で約4.3万円、「シナリオ2」で約4.9万円の増加になるという。
年収1000万円以上世帯では、「シナリオ1」で約6.9万円、「シナリオ2」で約7.8万円の負担が増加する。年収が多いほど消費水準も高いため、金額ベースでみた負担は高所得世帯のほうが大きくみえる。しかし、年収に対する負担率(食料・エネルギーの負担額÷年間収入)の増加分を比較すると、年収1000万円以上世帯では「シナリオ1」でプラス0.5%ポイント、「シナリオ2」でもプラス0.6%ポイントの増加にとどまる。