仕事と家庭の両立が労働力確保、世帯収入増加につながる
――多様な「働き方」の面では、2017年にグループ会社のライフ&ワークスを立ち上げるなど、ユニークな取り組みをされています。同社では、出産や子育てで一時退職した女性コンサルタントが、時短勤務や在宅勤務で活躍。また、シニア世代のコンサルタントも所属し、一人ひとりのライフステージに合わせた職場環境があるそうですね。設立には、どのような経緯があったのでしょうか。
秋葉さん「ライフ&ワークスの設立のころは、政府が『働き方改革』に本腰を入れ始めた時期でした。背景には、やはり労働人口の急速な減少があり、日本経済への影響を考えると、企業における業務の生産性向上などが急務だと、私はとらえていました。
そして、オデッセイでは創業以来、人事ソリューションの提供を通じて、クライアント企業の業務の効率化、従業員の生産性向上による『働き方改革』の推進、企業力の維持や向上を支援してきました。
その一方で、もっと直接的に、『働き方改革』を支援できないか、という思いがありました。そこで設立したのがライフ&ワークスです。具体的には、コンサルティング市場の潜在的な労働力を活かすことはできないか、と考えていました」
――詳しく教えてください。
秋葉さん「当時、コンサルティング業務は、比較的ハードワークで勤務時間も長く、時短勤務やテレワークなどの在宅勤務は現実的ではない、と考える人が多かったように思います。それと、出産を機に退職して、いまは育児中心の生活だけれども、もう一度やりがいを感じたコンサルタントとして活躍したい女性は一定数いる、と想定されました。しかし、育児をしながらでは、以前のようにフルタイムで働けず、復帰を断念しているケースは想像に難くありません。そこでぜひ、元コンサルタントのみなさんに、時短勤務やテレワーク勤務による『働き方』で再び輝いてもらいたい、と。そしてそのような場が必要だと、オデッセイとは別法人で立ち上げたのです。人手不足が常態化していたコンサルティング業界のためにもなると考えました」
――こうした取り組みによって、GTPW2022年度「働きがいのある会社」(※)認定、東京都認定「TOKYOテレワークアワード」受賞など、公的な機関でも評価されました。
秋葉さん「GTPWの『働きがいのある会社』認定は、日頃、社員環境満足度に注力する企業として、従業員の声をもとに第三者がどのように評価するのか興味がありました。それだけに、認定を受けて安堵するとともに、今後はGPTWからさらに高く評価していただけるように努力していきたいと思っています。
また、『TOKYOテレワークアワード』では、テレワークを先駆けて導入しただけでなく、前述した定量的な評価や人材育成を行うことで、テレワーク環境下でも従来と変わらない評価を実現し、生産性も向上させた点を評価していただきました。不慣れなテレワークが始まり、多くの企業には『仕事ぶりが見えないので評価が難しい』『テレワークは仕事の生産性が落ちる』などの課題感もあったかと思います。その中で、弊社の取り組みが第三者に認められたことには喜びを感じました」
※GTPW(=Great Place to Work)は、「働きがいのある会社」の調査や評価、支援などを行う専門機関。世界約60か国に展開。
――どうして、オデッセイおよびライフ&ワークスでは、社員環境満足度にこだわるのでしょうか。
秋葉さん「お客様に満足いただけるサービスを提供したいからです。そもそも社員環境満足度の向上を取り入れたのは、経営理念の『信頼できるサービスをより安く、より早くお客様に提供する』を実現する目的でした。そのためには、社員のコンピテンシー(能力や力量、適性)を高める必要があります。その成長をサポートするのが、働く環境への満足度の向上です。社員環境満足度を高めるには、『仕事と家庭の両立』させていくこともポイントだと考えています」
――近く、「育児・介護休業法」の改正もスタートしますから、仕事と家庭の両立は、多くの企業や職場にも広まってほしいですね。
秋葉さん「おっしゃるとおりですね。繰り返しになりますが、今後、日本における労働人口は急減します。その労働力を確保する対策を講じない限り、日本の経済力も衰退するでしょう。そんな日本の未来を迎えないためにも、多くの職場で『仕事と家庭の両立』が実現できれば、企業側にとっては労働力確保になります。また、働き手にとっては世帯所得の増加につながり、日本経済にプラスに働くと考えています。
最近、『ウェルビーイング』という言葉が、人事関係者の間ではトレンドです。これは肉体的、精神的、社会的すべてが満たされた幸福な状態を意味します。そのウェルビーイングな企業を実現するうえでも、時間や場所にとらわれない働き方は今後ますます重要になると考えています」
――ありがとございました。