商品を売る後ろめたさを解消する「未来思考」
多くの営業マンは、商品を売ることに後ろめたさを感じている。それは自分が扱っている商品の価値を、本気で理解しようとしていないからだ。ようは、ただの勉強不足だ、と堀口さんは断言している。商品の価値を正しく知っていれば、迷っている相手の背中を押すこともできる。
一方、自分がいいと思っていない商品を強引に売ろうとすると、押し売りになる。「背中を押す」と「押し売り」の違いは、商品の力を信じているかどうかだ。後ろめたさを感じながらのセールスは絶対にNGだ。まずは自分の商品に惚れ直し、そのうえで、お客様の背中を堂々と押すように、と勧めている。
売上をつくる数字を把握しておくことも大切だ。基本の3数字を挙げている。
アポ設定率=アポ数÷コール数
契約率=成約数÷商談数
平均単価=売上÷成約数
これらの数字を自己管理する。たとえば、アポ数は平均的なのに、売上が低いとしたら、原因は契約率が低いか、単価が低いかだ。数字を分析すれば、やるべきことがあぶり出される。
トップセールスと詐欺師には共通点がある、という項目には驚いた。説得力を増すのは、熱意ではなく技術だというのだ。3つのポイントとは、1権威、2同意、3ストーリーだという。
営業マンが権威を見せるには、まず外見を整えることだ。もう1つが「実績」だ。有名会社と取引がある、受賞歴など、探せば必ず出てくるので、いくつか準備する。2つ目の同意とは、商談の序盤では、相手の話にすべて同意すること。人は好きな人の意見は受け入れやすいので、同意を徹底すれば説得力が上がる。3つ目のストーリーとは、お客様に響く自身の体験談だ。
お客様の断り文句を切り返すための「クッション話法」も参考になる。「YES BUT」が基本だが、その応用編を披露している。言葉を復唱、承認したうえで、否定するのではなく、会話の中に「そのうえで」とか「もし」、「どのような点で」などの言葉を盛り込み、切り返すのだ。
コロナ禍でオンライン営業も広がっている。堀口さんは、慣れればオンライン営業は、いいことずくめだ、と書いている。なぜなら、移動時間ゼロ、交通費ゼロ、荷物ゼロ、天候の影響ゼロ、遠距離の影響ゼロだからだ。じつはオンライン商談は画面の中に、お客様のプライベートのヒントが詰まっているため、ラポールをつくりやすいそうだ。
商品を売ることからスタートし、今は「売る技法」を売っている堀口さん。自身の体験談もところどころで披露している。営業は「お客様の問題解決のためである」という前向きな哲学が、さまざまな手法の原点にあることがわかった。営業以外の仕事にも共通するものだろう。
(渡辺淳悦)
「即決営業の超準備」
堀口龍介著
秀和システム
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