電子契約導入へ...イメージしておくべきことはたくさんある!
まさにいいことずくめのように見える電子契約化ですが、一方で、たとえば本契約に関連する駐車場契約や、家賃保証契約などの書面も、あわせて電子化しておかないとなりません。
本契約は効率化したのに、付随する契約が書面のままで片手落ち、ということになり兼ねません。それに、直接会うわけではないという前提に立てば、契約の相手先である当事者の確認も含め、セキュリティチェックは万全であることが求められます。
あわせて、契約書の真正性も担保しなければなりませんし、そのために暗号化と復号にパスワードを利用してオーソライズする「電子署名」を用意する必要があります。
ということは、当然、コスト全般が軽減されても、セキュリティ対策や、新たな業務フロー構築には、別途相応のイニシャル・コストが発生することが想定されます(これは、フローが変わるのですから必要なコストです)。
また、これは杞憂に終わればいいのですが、電子契約になると、契約に必要な時間をあらかじめ調整する必要がなくなるため、契約自体をなおざりにしてしまうケースが出てきてしまう可能性があります。
仮に、当事者の片方の応答がない場合、いつまで待てばいいのか、相手がいつ対応するのか、それともしないのか分からない――こういうきわめて不安定で、ストレスフルな状況に置かれることになります。
民法525条では、「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。」と定めていますから、契約の応答を待つ状況が長期化する可能性も考慮しておかなければなりません。
これを防止するためには、電子契約ではとくに「契約を承諾する期限」を決めておくことがポイントです。
さらに、予期せぬサイバー攻撃などによってセキュリティが破られ、情報漏洩してしまう不安は常に電子契約にはついてまわります。電子情報の保存・管理にはセキュリティの高いクラウド・サーバーを活用するなどの対策が、今後求められるようになるはずです。
このように電子契約の解禁には大きなメリットがある一方、細かい憂慮事項や制度変更にともなう若干の混乱が発生することが予想されます。2022年5月中旬と目される電子化契約解禁を待つまでもなく、今すぐに情報を収集し、対応について検討しておくことが求められます。
(中山登志朗)