不動産契約の「電子化」解禁!いよいよ本格化! そのメリットは?課題は?(中山登志朗)

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印紙税不要に...これだけでも大きなメリット!

   これまで「紙」での書面交付が必要だったのは、宅建業法で定められた重要事項説明、売買契約締結、媒介契約締結という3つの契約です。

   とくに重要事項説明については、対面での説明を義務付けられていたため、電子契約化についてのハードルと考えられていました。ところが、2021年4月以降、国交省が定めたマニュアルに沿って対応すれば、IT重説(ウェブ会議システムなどのITを使って、重要事項説明を行うこと)が可能、という弾力的な運用にあらためられました。

   また、上記の通り、デジタル改革関連法が成立してからの9月以降は、押印義務の廃止・書面の電子化も認められることとなりました。書面を電子化すれば、「紙」ではないので、印紙税の対象外となるります。そのため、とりわけ不動産売買においてはIT化によって、高額な印紙税を納付する必要がなくなって(これだけでも極めて大きなメリットと言えます)、不動産売買のIT化はコスト削減という意味でも必須でしょう。

   コロナ禍によるテレワークの定着もあって、IT重説に関しては、大手を中心に電子化対応する不動産会社が急増。書面交付の義務がない賃貸借契約についても、更新および退去の際のペーパーレス化(PDFなどで電子書面の交付とする取り組み)が進んでいます。

   当然のことながら、電子契約にすれば、契約することを目的として顧客を訪問したり、面談のため時間を取ったり、双方の都合を調整したり......という業務が大幅に削減もしくは不要になります。また、書面の郵送コストや郵便局まで出向くといったちょっとした手間なども省けます。そのため、上記の印紙税も不要となることも含めて、契約に関するコスト全般の軽減にも寄与します。

   さらに、対面で契約する必要がなくなるということは、時間と場所を選ばずに遠隔地であっても(海外でも)契約可能ということですから、契約自体のハードルが下がることによって取引の活性化にも期待が持てます。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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