看板政策「共同富裕」が経済成長の足かせ
全人代で最も重視されるのが、冒頭に行われる首相による「政府活動報告」だ。いわば政権の施政方針演説で、李克強(リー・クォーチャン)首相はここで「5.5%成長」を打ち出した。
これが高いか、低いか。21年の成長率は8.1%と「6%以上」とした目標を大きく上回った。ただし、コロナ禍で20年の成長率が2.2%まで減速した反動だった。足元では21年10~12月期の成長率が4.0%と低空飛行になっている。そのため、22年の「5.5%」という目標は、19年以来3年ぶりに前年目標から下方修正せざるを得なかった、ということだろう。
こうした経済低迷の背景にあるのが「共同富裕」だ。共に豊かになるという意味で、習政権の看板政策といえる。ようするに、格差是正だ。
住宅価格の投機的な高騰などに国民の不満が高まったことから、経済成長を多少犠牲にしても住宅価格を抑えるほか、アリババなど大手IT企業の規制に取り組んできた。徹底して国内のコロナ感染を封じ込める「ゼロ・コロナ政策」とも相まって、経済活動が減速した。
共同富裕は、習氏が政権に就いた当初に力を入れた「反腐敗」(汚職一掃)の取り組みと同様、国民の不満に応える狙いで、ここにきての共同富裕は習政権3期目をにらんだ最重要政策でもあった。ただ、それも行き過ぎると経済を痛めすぎる――そんな懸念が強まっていた。
李首相の政府活動報告は、まさにこの点を意識したもので、報告で共同富裕にはさらりと触れただけ。逆に、景気の持ち直しの重要性が強調され、「積極的な財政政策の効力を高める」として、減税措置や税の還付などを含めて、前年を上回る2.5兆元(約45兆円)の企業負担軽減を進める方針を示した。雇用の安定化に向けて、失業保険や労災保険の保険料引き下げなどの措置の延長も打ち出した。
財政と並ぶ金融政策についても「緩和的な金融政策の実施を強化する」として、21年12月、22年1月と連続で実施した利下げの追加実施に含みを残した。