新型コロナのもたらした「がん」への影響...診断&切除患者数の大幅減 早期発見、阻害する困った事態(鷲尾香一)

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「切除治療の機会を失った」がん患者の実態

   さらに、研究ではがん切除患者数の大幅な減少も確認された。

   各がんにおける切除患者数の減少数と減少割合は、食道がん1375人(12.6%)、胃がん8176人(14.1%)、大腸がん6032人(9.2%)、直腸がん2346人(9.3%)、非小細胞肺がん3959人(10.9%)、乳がん1701人(10.9%)、 前立腺がん2116人(12.1%)、子宮頚がん2494人(12.0%)となっている。

   また、膵がんと膀胱がんでも、247人(7.9%)、373人(3.0%)の減少が確認されている。この結果、2万8817人ががん切除の機会を失ったと推定される。

   筆者は、2月13日の「ここにも新型コロナの影響...なぜ「あの犯罪」は増加したのか?(鷲尾香一):J-CAST 会社ウォッチ」で、警察庁の令和3年(2021年)の犯罪統計資料から、新型コロナの感染拡大がDV(家庭内暴力)と児童虐待が増加している可能性を指摘した。

   今回の横浜市立大学の研究結果も、新型コロナが受診抑制という行為を通じて、がん患者の治療に大きな影響を与えていることを示している。

   研究チームでは、「2020年度の新型コロナを直接原因とする死亡数は3492人であり、その8倍のがん患者が切除治療の機会を失った」と指摘している。

   そのうえで、「低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニングは死亡リスクを減少させることが以前から知られている。この研究が健康診断実施・受診の促進につながればよいと考えている」とコメントしている。

   なお、この研究成果は2月10日、英文医学誌「European Journal of Cancer」に掲載された。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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