「前川孝雄の『上司力トレーニング』~リモートワークで働きがいある職場を創る」では、リモートワーク下での「支援型マネジメント」について解説しています。
前回までをおさらいすると、第1のポイント:部下の仕事の「責任の明確化」、第2のポイント:部下の「仕事の具体化」、第3のポイント:上司の「反応の意識化」、第4のポイント:上司の「ITツールの習熟化」を取り上げてきました。
今回は、第5のポイントとして、リモートならではのチームワークの作り方で大事になってくる「遠隔での仲間化」を説明しましょう。
コロナ禍の前から「オンライン飲み会」をやっていた企業
今から6年前の2016年。私は企業誘致のための経営者向けセミナーに招待され、ある地方の風光明媚な海を見下ろす会場に出向きました。セミナーが始まると、なんと最初の講演者のIT企業経営者は出張先のアメリカからオンラインで、リアルタイムのプレゼンテーションを行うとのこと。現在は私自身もオンラインでの講演をよく依頼されるものの、当時は仰天したものです。
続いての衝撃は、同社の全社員がリモートワーク可能な環境にあり、全国津々浦々の自宅やワークプレイスで仕事をしているとのこと。全国どこでも働けることから、居住地を問わず優秀なエンジニアが採用できる、と話されていました。
さらに驚いたのが、全国のエンジニアがその日の仕事を終えた後、それぞれ自宅でビールやつまみを用意し、職場の仲間で「オンライン飲み会」を開くというのです。コロナ禍以降、リモートワークが急速に普及したこの2年ほど、普通の光景になりましたが、当時は想像を超えていました。
この時は、内心、「何もそこまでしなくても......」と感じたのを覚えています。
でも、これは、わずか6年前の話。いまやリモートワークや地方に暮らしながら都心企業で働くことも珍しい光景ではなくなってきています。働く常識はコロナ禍で一気に進化しました。
コロナ禍が長引く昨今、ずっと在宅勤務が続くことによる社員の孤立化、そしてメンタルの不調も問題視されるようになってきています。今思えば、リモートワーク先進企業は、コロナショックがあろうがなかろうが、リモート環境下での「仲間化」の大切さを、深く理解していたのです。