社内リモート会議「顔出しナシ」でOKな理由とは? 生活、家族と両立させるリモートワーク術

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   コロナ禍で広がったリモートワークについて、多くの本を取り上げてきたが、本書「リモートワーク大全」(ポプラ社)は、従業員の目線で書かれているのがユニークだ。サブタイトルが「悩みがなくなり成果があがる105のこと」。働き方だけではなく、生活や家族とのかかわり方にも目配りしているので、とくに子どもを持つ女性に役立つだろう。

「リモートワーク大全」(壽かおり著)ポプラ社

   著者は、ソフトウェア開発企業、シックス・アパートの広報担当を務める壽かおりさん。同社は2016年、EBO(従業員による会社の買収)による独立を機に、個人にとって生産性の高い働き方に変えるため、毎日出社しないワークスタイルを始めた。

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デスク周りにあれば便利なものは?

   それにともないオフィスも、移転した。東京・赤坂の120坪の広さで50席のオフィスから、神保町の30坪で総務メンバー2席とフリーアドレスの10席だけのオフィスになった。30人ほどいる社員のほとんどが、出社するのは月に1~2回程度だという。

   巻頭のカラーページに社員が自宅に設けたワークスペースの写真がいくつか載っている。飛行機のコックピットをイメージしたものは、正面にウルトラワイドの曲面ディスプレイがあり、サブディスプレイやiPadが取り囲むように配置されている。学習机を並べ、片方は小学生の子ども、片方は親のワークスペースにしたものもある。ようは十人十色。自分にとって最適であればいい、と。

   デスク周りにあれば便利なものなど、さまざまなアイテムを紹介しているのも実践的だ。まず、ノートパソコンを置く台を勧めている。ディスプレイの位置は、姿勢よく座ったときに、まっすぐ前を見た目線の高さがいいそうだ。評者もためしに空き箱の上にノートパソコンを置いてみたら、ずいぶん見やすいことがわかった。これまでかなり目線を下げていたため、姿勢が悪くなっていたかもしれない、と反省した。

   外付けキーボードを使っていれば、打ちにくくなることはない。飲み物をこぼして壊してしまっても、被害はキーボードにとどまる点でもメリットは大きい。

   スマホやタブレットなどのモバイル機器も、見やすい角度に立てて置けるスタンドがあれば、サブ端末として活用できる。ほかに、郵便セット、文房具一式、大きめサイズの付箋メモ、耳栓、USB扇風機、手ぬぐい、マッサージ・運動系アイテムもあれば便利だ。

リモート会議では「耳障りなノイズ」に注意

   リモートワークならではのコミュニケーションの取り方をいろいろ提案している中で、面白いと思ったのは、同社の社内会議はリモートになった当初からずっと顔出しナシ、ということだ。どういうこと? その理由として、3点挙げている。

1 対峙するのは顔ではなくて議題 画面には常に会議資料を共有
2 通信量が増えてパソコンの処理が重くなる 通信量が1ケタ違う
3 自分と家族のプライバシーを守るため

   さて、同社のとある製品チームの定例会議の会議資料が載っているが、これがかなり濃密だ。資料は参加者全員が手元で閲覧しつつ編集できるGoogleドキュメントなどで作成。会議の主旨や目的、議題と各部門の担当者からの報告・相談事項が書かれている。参加者は、会議開始時間までに書き込んでおくのがルールだそうだ。

   初めて話をする社外の人がいるときは、カメラをオンにして顔出しで行う方がいいが、頻繁に会議をするようになったら、顔出しナシもありだという。参加者全員の肩書や役割と名前を共有するのも大切だ。

   オンライン会議で最も大事なマナーは、耳障りなノイズを出さないことだ、と書いている。ノイズを減らすには、パソコン内蔵スピーカー&マイクではなく、外付けのものを使うこと。もう一つのポイントはミュート(無音)を活用すること。

   会議が家族の食事時間にかぶってしまうこともある。そんなときのために、オンライン会議ができる場所を自宅内外にいくつか持っておくと便利だ。

   「リモートワーカーが知るべきこと」として、「成長のための時間を作ろう」と書いてあるのに、はっとした。通勤時間はインプットに最適の時間だった、というのだ。往復の電車内で本を読んだり、ポッドキャストを聞いて英語を学んだり、有意義に使っていた人も多いだろう。

   継続的に学ぶ時間を確保するために、壽さんは、学ぶ時間を決める、触発し合える仲間を作る、オンラインセミナーに参加してみる、ことなどを勧めている。

小さな子どもを見ながらのリモートワークは無理!!!

   家族・子どもとの対応にも1章割いている。「家で働けるなら、仕事と育児を両立できていいわね」と言われるが、家で一人、小さな子どもを見ながら、フルタイムの仕事をするのは無理、と断言している。これは、共感する人も多いことだろう。

   在宅であってもフルタイムの仕事をするならば、家族や保育園やベビーシッターなど信頼できる大人に預けることができればいいが、それが難しい場合、

〇子どもが寝ている早朝や深夜に仕事をする
〇日中は子どもが興味を持ってくれそうなアイテムをたくさん用意して小出しに提供する
〇しばらく仕事を半休にして半日分の仕事をこなす

――以上のことを提案している。

   小学生以上の子どもがいる場合、オンライン会議のサインを決めておくのも有効だという。また、子どもが習い事や塾の間、一番仕事がはかどるとも。小学生の娘がいる壽さんならではの実感だ。

   リモートワークで生産性は上がったのか? という質問に対し、「社員一人ひとりの生産性については多少上がった程度ですが、それよりも社外の人とのコミュニケーション頻度が増えたことで新しいビジネスを多数生み出すことができました」と答えている。

   リモートワークのさまざまな可能性を知るには、便利な1冊だ。

(渡辺淳悦)

「リモートワーク大全」
壽かおり著
ポプラ社
1870円(税込)

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