参院選での「トラウマ」ある自民党
インターネット上でも専門家から批判的な声が相次いだ。
日本経済新聞(3月15日付)「新型コロナ:年金受給者に臨時給付金、政府・与党検討 1人5000円案」という記事につくミニ解説の「Think欄:分析・考察・ひと口解説」コーナーにはこんな意見が掲載された。
早稲田大学政治経済学術院の深川由紀子教授は「エマニュエル・トッド『老人支配国家 日本の危機』(2021年)の指摘を思い出した」として、「『この選挙を乗り切れば』を繰り返して一体、どれだけの時間を失い、どれだけの改革、どれだけの成長機会を放棄してきたのか」と呆れた。また、「若く、才能ある人材たちの海外移住、という形で若年層の静かな反乱が既に始まっている」と危機意識の欠如を指摘した。
同欄で、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「財政規律」の観点から、「参院選対策の色彩が濃い、高齢の有権者へのバラマキ的な動きだという受け止め方が、金融市場の側ではされやすい」と批判した。つづけて、参院選に向けては野党の一部からも、積極的な景気対策を求める声が出ているとしたうえで、近くガソリン税の「トリガー条項」発動に向けて、原油高対策を協議する自民・公明・国民民主の幹事長会談が行われるとの報道をひにあいに、「財政規律は引き続き緩んでおり、それは与党と野党の双方にまたがる話である」と述べている。
そのほか、日本経済新聞社編集委員・論説委員の斉藤徹弥記者は、高齢有権者に対する自民党の「トラウマ」を取り上げ、「参院選で高齢者の反乱を懸念しているのでしょう」と指摘した。「2007年は年金記録や後期高齢者医療制度で高齢者にそっぽをむかれ、自民党は歴史的な大敗でした。これがトラウマになり、後期高齢者医療の自己負担2割への引き上げはずっと先送りされてきました。昨年ようやく決め、引き上げ時期は念を入れて参院選後の今年10月にしましたが、団塊の世代が後期高齢者になり始めることもあり、自民党は不安なのでしょう」