M&A仲介会社の実態
「週刊ダイヤモンド」(2022年3月19日号)の特集は「事業継承バブル M&Aのカネと罠」。M&A仲介会社の実態を詳しく伝えている。
先週の「週刊東洋経済」が紹介した「M&Aマフィア」が対象にするのは、上場企業同士の企業買収だった。それに対して本号の特集は、後継者不足から黒字にもかかわらず廃業の危機にある中小企業の事業継承にスポットを当てている。
中小企業庁は60万社が廃業の危機にあり、2020年には5万社が休廃業・解散した。そこで動き出したのがM&A仲介業者だ。
日本M&Aセンターホールディングス(HD)、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクの3社が「御三家」で、そろって最高益更新中だとか。業界パイオニアとされる日本M&Aセンターはビジネスモデルをゼロから作り上げた「絶対王者」。しかし、昨年12月、売上高の不正計上が発覚し、有価証券報告書を訂正する事態となり、社長以下が処分を受けた。
M&Aキャピタルパートナーズは、上場企業で年収トップとして有名になった。平均年齢31.4歳。平均年収は2269.9万円。固定給は低いがインセンティブ報酬と業績連動賞与に上限はなく、大型M&Aを成約させれば年収1億円も夢ではないという。
営業難易度が高いこともあって、転職者が圧倒的に多い業界だ。なかでも金融機関からの転職者が多いが、ハードルも高いようだ。採用の年齢上限はおおむね30代半ば。また、「営業成績が上位10%に入る」など前職での実績が求められる。それだけではない。中小企業の社長とも馬が合いやすい稀有な能力も必要だという。
日本M&Aセンターは、全国の地方銀行などから事業継承に関するニーズを吸い上げるネットワークを構築してきた。地銀はM&Aの面倒な調整を引き受ける日本M&Aセンターに丸投げしてきたのだ。
こうした構図にも変化が出てきたという。滋賀銀行は日本M&Aセンターと協業の道を歩み、受託件数を大きく増やした。また、京都銀行は14人の専従者を置き、成約件数を増やしている。
オリックスや野村ホールディングスも、中小企業の事業継承ビジネスに参戦してきた。もともと金融大手と仲介専業会社は元請けと下請けの関係だった。もともとは、もうけが小さいため、顧客の中小企業から相談があれば仲介専業会社に丸投げし、報酬の30~50%を受け取るスタンスが基本だった。だが、仲介専業会社の肥大化に危機感を持ったようだ。
M&A仲介は、売り手と買い手の双方から報酬を得る「両手取引」が基本。だが、一方の利益の最大化を図れば、もう一方の利益が毀損する利益相反が指摘されている。これは2020年、当時、行政改革担当相だった河野太郎氏が発言し、注目された話題だ。
そこで、中小企業庁はガイドラインを策定し、業界は自主規制団体を立ち上げた。利益相反が社会問題化すれば、バブルは一気に弾ける、そんな危うさと隣り合わせだと結んでいる。