災害の教訓、忘れないで――。総合建設機器レンタルのアクティオ(東京都中央区)は、拓殖大学大学院特任教授・防災教育研究センター長の濱口和久さんを招いたオンラインセミナーを2022年3月10日に開催した。
アクティオでは自治体との「災害協定」進めているほか、災害時には同社が扱う発電機、車両、トイレやハウスなどの資器材を供給する取り組みを続けている。
東日本大震災から11年。10年ひと昔というだけに、あらためて防災意識を高めたいものだ。濱口さんも「災害に対する無関心がよくない。災害の風化を防ぐこと、災害の教訓を忘れないことが大事」と呼び掛けていた。
「『自分ごと』としてとらえる意識が重要」
オンラインイベントでは、まず濱口和久さんが登壇し、「災害の日常化と、災害の備え」をテーマにスピーチした。最も伝えたいことは「災害に対しての無関心がよくない」ということだ。
「自衛隊や行政など誰かが助けてくれる、という意識を持っているのは厄介です。本来、災害を考える場合、災害対応を他人ごとではなく、『自分ごと』としてとらえる意識が重要です」(濱口さん)
地震大国の日本の場合、世界主要都市のリスク指数を見ると、首都圏に位置する東京や横浜は飛びぬけて高い、と濱口氏は指摘する。しかも昨今、地球温暖化にともなう気候変動がもたらす災害の「激甚化」への懸念もある。
そのうえで、かねてから30年以内発生率が高いとされる「首都直下地震」が起きた場合の危惧について、
「首都直下地震により、東京発の世界恐慌を引き起こす可能性がある。また、南海トラフ地震は、阪神・淡路大震災と東日本大震災が同時に起きるような状態。そうなれば、多くの太平洋側に集中している企業の研究所や工場などが被害を受けるので、サプライチェーンの崩壊が起きてもおかしくない」
と、濱口さんは話した。
また、こうした事態を想定して、企業には「BCP(事業継続計画)」の早急な策定が求められると指摘。従来は、地震、台風、豪雨など自然現象を対象としたBCPでよかったが、コロナ禍で感染症の脅威も出てきたことも踏まえ、現在はあらゆる有事、緊急時へ対応できるBCPが必要だと強調した。
「感染症で社会が麻痺した場合の事業継承もしっかり考える必要があります。なかでも、企業のサプライチェーンへの影響です。たとえば、生産現場で感染者が出て、モノをつくることができなくなったらどう対応するか、事前に準備することが喫緊の課題です」(濱口さん)
平時に有事を想定することには「そこまで準備しなくても」「そこまでお金をかけなくても」という考えになりがちだが、濱口さんによると、事前に準備しておくことが結果として、災害後の復興後の時間、コストがからない、などのメリットがあるとした。