社員研修は「育てる」「生かす」が重要
――Z世代の若手社員が社内で活躍するためには、どうしたらよいでしょうか。
桑原さん「これまでのビジネス環境では、やるべきことに正解があって、それをやり切れることで、よいことが起こりました。とはいえ、正解を求めるあまり、上司や相手が求めるものを出そう、ダメ出しされないようにしよう、といった気持ちが優先された。だから、個のWell-beingについては必ずしも豊かになっていなかったのではないか、という側面もありました。それでも、何らかの成果を出してきたのが、これまでのビジネス環境です。
しかし、これからのビジネス環境では、新しいアイデアや意見が必要です。そこには、厳しさや競争的な雰囲気はマイナスに働くことも増えてきて、うまくいかなくなってしまいます。そんなときは、Z世代の若い人に、ゆるい感じでミーティングのディスカッションやブレストのファシリテーションをしてもらうのもよいかもしれません。いろんな意見が出やすくなり、チャットなど最新ツールも活用して、ブレストも活発になる場面を私も多く見てきました。Z世代がこうした強みを発揮しているシーンに接したら、リスペクトを感じると思いますよ。
Z世代は、社会的意義への関心がとても高く、しっかした考えを持っています。事業を進めるうえでも、彼らの特徴をうまく取り入れていく。すると、企業自身がやりがいや社会的に意義ある存在として認知されるビジネスを産み出す力となるはずです」
――最後に、アフターコロナ時代の社員研修のポイントはなんでしょうか?
桑原さん「繰り返しになりますが、社員研修やトレーニングでは『育てる』『生かす』の2つが重要です。『育てる』では、一人ひとりが職場の上司に依存せずに、自分で考えて動く自律の力と学習の能力を育てていきます。正解がない時代なので、自律的に動く力はとても重要ですが、最初の頃は自分で動いても結果が出にくい環境でもあります。そのために、自身の経験から、次につながる学びをつかむ学習の力もセットで育ててほしいと思います。
もう1つの『生かす』は、枠を取り払って、一人ひとりのメンバーが持っている個性、持ち味を思う存分発揮することを意味します。この『生かす』では、従業員に対するコントロールを手放していくことになるので、結果の予測がつきにくく、実行の難しさがあります。
しかし、これからの新しい価値創造やWell-beingの世界は、そのやり方を通じて生まれてくるものです。企業にとっては、パラダイム転換をともなう大きな意思決定が必要でしょう。けれども、日本経済新聞社などが発足させた日本版『Well-being Initiative』に参画されている企業をはじめこの方向に舵を切っている企業は増えてきています。私たちも『 育てる』『生かす』の2方向で、これからの時代に向けて、企業を応援できる社員教育を生み出していきたいと思っています」 (おわり)
(構成 牛田肇)
【プロフィール】
桑原 正義(くわはら・まさよし)
リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス開発部主任研究員
1992年、株式会社人事測定研究所 (現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。探究領域は、VUCA×Z世代の育成アップデート、「個を生かす」生成アプローチ。NPO法人青春基地(プロボノ)。立教大学経営学部BLP兼任講師。