シャープの「不可解」人事を読み解く その背景に...危機感募らせる「地政学的な変化」

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台湾外に製造拠点を設ける動き活発

   戴氏の出身母体である鴻海精密工業は、メーカーなどから電子機器の製造を請け負うサービス(EMS)の世界最大手であり、米アップルのiPhoneなどの生産を手掛けながら規模を拡大してきた。鴻海を1974年に創業した郭台銘氏は立志伝中の人として知られ、戴氏は郭氏の部下の一人だった。

   台湾企業にとって、この2年間の地政学的な変化といえば、いうまでもなく中国の動きだ。

   習近平主席は台湾との統一を目指すことを声高に叫び、軍事圧力を高めている。中国が台湾に侵攻した場合、電子機器製造で世界のサプライチェーンを支える台湾企業が被る打撃は計りしれない。

   このため、台湾企業が台湾外に製造拠点を設ける動きが活発化している。世界的半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)が米国や日本に工場を新設する計画を打ち出しているのは、その代表例だ。

   そうした流れを見れば、鴻海が日本に持つシャープの重要性も増してくる。今回の幹部人事の発表にあわせて、シャープはテレビ向け大型液晶パネルを生産する堺ディスプレイプロダクト(SDP)の完全子会社化を目指すと発表した。

   シャープは経営危機の要因となったSDPの株式の大半をかつて手放したが、それを海外ファンドから買い取る協議を始めるというのだ。完全子会社化すれば、パネルをより安定的に調達できるメリットがある。

   中国の台湾侵攻に備えた鴻海グループのリスク回避、という視点でシャープに起きている事象を捉え直すと、一貫性が見えてくる。折しもロシアによるウクライナ侵攻が起き、台湾リスクがあらためて注目されている。鴻海が一体化を強めるシャープはどこに向かうのだろうか。(ジャーナリスト 済田経夫)

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