本書「『パラレルインカム』のはじめ方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のタイトルを見て、「複数の収入」だから副業についての本かと思ったら、違っていた――。本書の主題は、好きなことを仕事にする「労働所得」と、自動的・安定的に入ってくる「資産所得」という2つの収入を武器に、精神的にも経済的にも自由になろう、と提案するものだった。
「『パラレルインカム』のはじめ方」(泉正人著)ディスカヴァー・トゥエンティワン
著者の泉正人さんは、お金の貯め方、会計、経済、資産運用などを教えるファイナンシャルアカデミー代表。著書に「お金言論」「お金の教養」などがある。
会社員だった泉さんは、20代前半は浪費を繰り返す日々だったという。25歳から先取り貯蓄を始めた程度で、お金に関して特別なことはしていなかった。転機は、26歳のとき。母親が急死して、「いつ死ぬかわからないなら、せめて後悔のない人生を送りたい」と発起し、会社から独立し、自分のビジネスを始めた。
最初に手掛けたのはオーディオのネット通販だ。マニア向けの高級オーディオ製品を扱い、初年度から年商1億円を超え、1年で1000万円超の利益を上げた。貯蓄が数百万円になった泉さんは、資産運用をやろうと決意し、投資本を読む勉強を始めた。
パラレルインカムを実現する4つのステップ
さまざまな投資をして気づいたのが、不動産投資が最も効果的だということ。660万円で物件を購入、毎月6万円の家賃収入を得た。収益率は約10%だった。2軒目を購入したところでお金が尽き、銀行融資を受けられることを知った。
千葉県にある古いアパート1棟3000万円の物件だが、銀行融資も3000万円。諸費用などがあり、かき集めてつくった200万円を頭金に購入した。月間の家賃収入35万円に対して、ローン返済が20万円、さらに管理費などの支出が5万円。実質手取りが月10万円、年120万円だった。
実際に自分が投資したお金は頭金の200万円だけ。それに対して年120万円の不労所得が入る。収益率は60%にもなった。
それから3年後、不動産投資を増やし続け、頭金はほとんど使わず、15億円の不動産を保有し、2億円の家賃収入、返済後の不労所得が1億円という経済的な自由を得た。
これは、「最初に労働所得を増やし、株式投資で資産構築を行い、その資産をもとに不動産を購入して資産所得を増やしていく」というパラレルインカムのステップを忠実に実行してきた、と振り返る。
そして現在では、社会に金融経済教育を広げるべく、ファイナンシャルアカデミーを運営していて、パラレルインカムを実現する4つのステップについて次のように説明している。
ステップ1:労働所得を増やす ひたすら仕事をする
ステップ2:資産構築をする 仕組みで貯蓄をつくる、生活コストを抑える、お金に対して長期視点を持つ
ステップ3:資産所得をつくる 株式投資などでキャピタルゲインをつくり、次第に不動産投資でインカムゲインへと移行する
ステップ4:仕事でも自己実現を達成する 資産からの安定した所得を土台に、ライフワークに取り組みつつ、好きなことだけで生きていくライフスタイルを確立する