東日本大震災11年、奮闘する被災地企業の今 「復興の道のり険しいが、福島に明るさが...」

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   東日本大震災の発生から2022年3月11日、11年を迎えた。震災で苦境に落ちった企業の奮闘が続いている。

   帝国データバンクが3月8日に発表した「被災地企業、『いまも営業』は6割 3社に1社は震災前の売上水準に『届かず』」というリポートから、被災地企業の頑張りの足取りと「今」をみると――。

  • 「がんばろう!石巻」の看板がある宮城県石巻市
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地域経済復興のシンボルになった造船業者が...

   帝国データバンクでは、11年を経た今もなお続く「復興の厳しい道のり」を示す近年の事例として、2社の大型経営破綻を紹介している。

   「株式会社ヤマニシ」(宮城県石巻市)は、東日本大震災後に一時、地域経済復興のシンボルになった。石巻地区では老舗かつ最大規模の造船業者だった。小型漁船での技術力を強みに、外航貨物船やコンテナ船など大型船の建造事業にも進出し、ピーク時の2010年3月期には年売上高約198億2100万円を計上した。

   しかし、東日本大震災の津波により工場など製造設備が甚大な被害を受け、休業を余儀なくされた。その後、2012年2月に現・地域経済活性化支援機構(REVIC)などの支援を受け、石巻地区復興のシンボルとして再スタートを切った。

   ところが、設備の新造や新造船事業に加え、船舶修繕業の再開に漕ぎ着けたものの、主力の船舶関連需要が当初想定より伸び悩んだ。思うように受注がこなかったのだ。2018年3月期の年売上高は約68億9600万円と、ピーク時の3分の1に低迷。財務内容が悪化し、先行きの見通しが立たなくなったことで、2020年1月に会社更生法の適用を申請した。負債総額123億円。

   「太洋産業株式会社」(東京都中央区)は、「タイサン」ブランドで知られた水産加工・販売業者だった。岩手県大船渡市などに自社工場を持ち、1982年12月期には約330億円の年売上高を計上していた。しかし、過去の設備投資負担を抱えるなかで東日本大震災に遭い、主力の大船渡工場が全壊。その後、2015年に復興補助金を活用し同工場を再建、同時に積極的な財務改善を進めていた。

   ところが、主力製品であるサンマの記録的な不漁が続くという「想定外」のトラブルにも襲われて、赤字が拡大。2017年3月期の年売上高は約76億7800万円と、ピーク時の4分に1以下に激減。資金繰りが限界に達し、2018年7月に民事再生法の適用を申請、その後破産した。負債総額は49億円。

原発事故で避難した企業、続々と福島に帰還

   調査結果によると、東日本大震災が発生した2011年3月から2022年2月までの11年のうち、震災被害が倒産の引き金となった「東日本大震災関連倒産」は累計2085件。負債総額は累計1兆7189億円となった。年々、倒産件数の数は少なくなっている。6年目以降は本格化した震災復興工事をはじめ、被災地域での生活再建、地域経済の再始動も背景に、関連倒産は年々沈静化の傾向をたどっている=図表1参照

(図表1)東日本大震災関連倒産の推移(帝国データバンクの作成)
(図表1)東日本大震災関連倒産の推移(帝国データバンクの作成)

   ただ、震災関連倒産のうち地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合が急激に高まっているのが近年の特徴だ。2022年の直接被害型の割合は、3年ぶりの50%となった。これは、震災を乗り越え、政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷などが影響を与えている。冒頭に紹介した造船業の「株式会社ヤマニシ」が代表的なケースだ。

   とくに2020年以降は、コロナ禍による打撃を受け、売上が当初想定よりも回復しないなどの理由から、最終的に経営が破綻するケースが多くみられる。

   また、東日本大震災発生時点で岩手県・宮城県・福島県の沿岸部を中心にした「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社を調べると、2022年2月時点で「事業継続」している企業は3244社(64.8%)を数えた。6割以上が地元にとどまり、踏ん張っているわけだ。

福島県浪江町の震災遺構の請戸小学校
福島県浪江町の震災遺構の請戸小学校

   しかし、震災から2年後の2013年2月の72.8%をピークに、事業を継続している企業は年々減っている。震災から11年経たいまも先行きを見通せずに「休廃業・倒産」した企業が全体の35.2%を占め、その割合は上昇傾向にある。

   岩手・宮城・福島3県の「被害甚大地域」で頑張っている企業、つまり2022年時点で「事業継続」している企業は、それぞれ「岩手=70.3%」「宮城=72.0%」「福島=43.9%」となった。福島県が突出して少ないようにみえるが、実は、宮城・岩手両県では、ピーク時に比べると減少しているのに、福島では逆に増えているのだ=図表2参照

(図表2)被災3県・被害甚大地域の事業継続率分布(帝国データバンクの作成)
(図表2)被災3県・被害甚大地域の事業継続率分布(帝国データバンクの作成)

   これは、福島県では原発事故による避難から、震災直後は事業継続率が2割にとどまっていたのに、その後は福島第一原発周辺地域のインフラ(工業団地、住宅、商業施設、交通など)の整備が進み、徐々に住民や企業が帰還していることがあげられる。ただし、福島県浪江町や大熊町、飯館村などの地域では、依然として事業継続率が2~3割台にとどまるなど、県内でも差がみられる。

コロナ禍も加わり、「息切れ型」倒産が心配

   また、2022年2月時点で事業継続が確認できている被災地企業3244社の売上をみると、震災発生後の2011年4月以降、売上高が震災前(2010年度)の水準に「回復した」企業は全体の65.4%にとどまっている。被災地企業の3社に1社では、いまだに1度も売上高が震災前の水準に届いていないのだ=図表3参照

(図表3)売上高が震災前までに「回復」するまでに要した期間(帝国データバンクの作成)
(図表3)売上高が震災前までに「回復」するまでに要した期間(帝国データバンクの作成)

   復興の道のりがいまだに厳しいことがわかるが、ここにきてコロナ禍が新たなハードルに加わっている。帝国データバンクはこう結んでいる。

「政府は、2021年3月に終了した『復興・創生期間』を引き継ぎ、復興の取り組みをさらに後押しする『第2期復興・創生期間』を2026年3月まで定めるものの、東北の復興事業は総仕上げの段階に入っている。当地での被災企業でも、今後は支援に頼らない本来の自主経営を求められることになるが、地域経済の衰退や震災で失った販路の消失など、企業努力だけでは挽回できないマイナス要素も大きい」
「また、新型コロナウイルスによる景況感の落ち込みなど、震災復興当時には到底想像しえなかった経営環境の激変も加わり、震災で被ったダメージから完全に回復できない事情も横たわる。今後も、業界によっては震災前の水準まで回復が及ばないことも想定されるなか、12年目以降も被災地を中心に震災に起因した『息切れ型』の倒産増加も否定できず、動向にはなお注視が求められよう」

(福田和郎)

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