東日本大震災11年、奮闘する被災地企業の今 「復興の道のり険しいが、福島に明るさが...」

原発事故で避難した企業、続々と福島に帰還

   調査結果によると、東日本大震災が発生した2011年3月から2022年2月までの11年のうち、震災被害が倒産の引き金となった「東日本大震災関連倒産」は累計2085件。負債総額は累計1兆7189億円となった。年々、倒産件数の数は少なくなっている。6年目以降は本格化した震災復興工事をはじめ、被災地域での生活再建、地域経済の再始動も背景に、関連倒産は年々沈静化の傾向をたどっている=図表1参照

(図表1)東日本大震災関連倒産の推移(帝国データバンクの作成)
(図表1)東日本大震災関連倒産の推移(帝国データバンクの作成)

   ただ、震災関連倒産のうち地震や津波による建物の倒壊・喪失など「直接被害型」の倒産が占める割合が急激に高まっているのが近年の特徴だ。2022年の直接被害型の割合は、3年ぶりの50%となった。これは、震災を乗り越え、政府・自治体の経営支援も活用して工場や事業所などハード面は再建したものの、取引先の廃業、需要の低迷などが影響を与えている。冒頭に紹介した造船業の「株式会社ヤマニシ」が代表的なケースだ。

   とくに2020年以降は、コロナ禍による打撃を受け、売上が当初想定よりも回復しないなどの理由から、最終的に経営が破綻するケースが多くみられる。

   また、東日本大震災発生時点で岩手県・宮城県・福島県の沿岸部を中心にした「被害甚大地域」に本社を置いていた5004社を調べると、2022年2月時点で「事業継続」している企業は3244社(64.8%)を数えた。6割以上が地元にとどまり、踏ん張っているわけだ。

福島県浪江町の震災遺構の請戸小学校
福島県浪江町の震災遺構の請戸小学校

   しかし、震災から2年後の2013年2月の72.8%をピークに、事業を継続している企業は年々減っている。震災から11年経たいまも先行きを見通せずに「休廃業・倒産」した企業が全体の35.2%を占め、その割合は上昇傾向にある。

   岩手・宮城・福島3県の「被害甚大地域」で頑張っている企業、つまり2022年時点で「事業継続」している企業は、それぞれ「岩手=70.3%」「宮城=72.0%」「福島=43.9%」となった。福島県が突出して少ないようにみえるが、実は、宮城・岩手両県では、ピーク時に比べると減少しているのに、福島では逆に増えているのだ=図表2参照

(図表2)被災3県・被害甚大地域の事業継続率分布(帝国データバンクの作成)
(図表2)被災3県・被害甚大地域の事業継続率分布(帝国データバンクの作成)

   これは、福島県では原発事故による避難から、震災直後は事業継続率が2割にとどまっていたのに、その後は福島第一原発周辺地域のインフラ(工業団地、住宅、商業施設、交通など)の整備が進み、徐々に住民や企業が帰還していることがあげられる。ただし、福島県浪江町や大熊町、飯館村などの地域では、依然として事業継続率が2~3割台にとどまるなど、県内でも差がみられる。

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